週刊バッテリートピックス 「トヨタ車載電池の生産強化」「王子HDが木由来の新材料」など
2024年3月4日~3月10日のバッテリー業界では、引き続き電気自動車(EV)向け車載電池が注目を集めた。トヨタがパナソニックとの合弁会社を完全子会社化。王子ホールディングスや第一工業製薬など異業種による関連材料の開発も目立った。海外ではテスラのドイツ工場火災なども耳目を集めた。
<国内>
●レアメタルリサイクルのエアメタルフロー、13億円超を調達 第三者割当増資などで
レアメタルリサイクルベンチャーのエアメタルフローテクノロジーズ(茨木県東海村)は3月8日、自社ホームページ上で、「第三者割当増資などにより、新たに13億5000万円を調達した」と発表した。調達した資金は、リチウムイオン電池のレアメタルリサイクル用商業プラントの開発などに充てる。
同社は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構発のスタートアップ企業として2021年に創立した。今回の資金調達は、私募ファンドのValue Chain Innovation Fundをはじめとする機関投資家7社・機関からの10億5000万円と、⽇本政策⾦融公庫からの3億円の融資を合計したもの。これまでの資金調達額は累計約20億円となった。
関連記事: エマルションフローテクノロジーズ社 シリーズBで13.5億円の資金調達 | MIRU (iru-miru.com)
●カンパーニュ、リサイクル可能なポータブル電池を発売
株式会社カンパーニュ(東京都武蔵野市)はリサイクルが可能なポータブル式リン酸マンガン鉄リチウムイオン電池を、3月8日から発売した。
カンパーニュ リサイクル可能なリン酸マンガン鉄リチウムイオン電池(ポータブル)販売開始 | MIRU (iru-miru.com)
●コマツ、ナトリウムイオン電池搭載のフォークリフトの実証実験を開始
コマツは3月7日、自社ホームページ上で、「ナトリウムイオン電池を搭載した電動式フォークリフトの実証実験を開始する」と発表した。3月中に複数の現場で試用機を導入する。ナトリウムイオン電池の搭載車の使用は同社として初めてで、世界でも先駆的な試み。
プレスリリース:-カーボンニュートラル実現に向けた現場の電動化を加速- ナトリウムイオンバッテリーを搭載した電動式フォークリフトの実証実験を開始 | ニュースルーム | コマツ 企業サイト (komatsu.jp)
●王子ホールディングス、木由来の新材料を用いた燃料電池材料を開発
王子ホールディングス(東京都中央区)は3月7日、自社ホームページ上で、「山形大学と共同で、セルロースナノファイバー(CNF)を主成分とする、燃料電池用『高分子電解質膜(PEM)』の開発に成功したと発表した。
CNFは、同社が手掛ける森林資源を生かした新素材開発の一環として開発してきた新素材。従来の電池向けPEMはフッ素由来のため安全性への指摘があったが、同社のPEMは木を主成分とするCNFを用いるため安全だという。
プレスリリース: セルロースナノファイバーを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」開発のお知らせ (ojiholdings.co.jp)
●トヨタ、パナとの合弁会社を完全子会社化 車載電池の生産拡充
トヨタ自動車は3月6日、自社ホームページ上で、パナソニックホールディングスとの合弁会社で車載用電池の生産を手掛けるプライムアースEVエナジー(PEVE)を完全子会社化すると発表した。3月下旬の実施を予定する。
車載向け電池の量産体制の強化が目的。PEVEは今後、これまでのハイブリット車(HEV)用電池に加え、BEV・PHEV用電池も含めて生産する。
現時点では、トヨタの関連会社は、PEVEがハイブリッド車用電池、同じくパナソニックとの合弁であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(出資比率 : トヨタ 51%、パナソニックHD 49%)が電気自動車(BEV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)・HEV用電池、系列の豊田自動織機がHEV用電池を量産している。
プレスリリース:トヨタ自動車、車載用電池の量産体制を強化 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)
●弘前大、高純度リチウムの高速採取技術を開発 使用済みLiBなどから
弘前大学理工学部 自然エネルギー学科(当機構兼任) 佐々木 一哉教授らの研究グループは、リチウム資源採取・回収のための新たな電気化学ポンピングシステム技術を開発した。塩湖や地下水中、使用済みリチウムイオン2次電池(LIB)から、金属不純物を全く含まない高純度なリチウムを高速かつ経済的に採取・回収する。2月21日発表の研究成果を、3月5日の日本経済新聞はじめ各紙が伝えた。
研究結果発表資料: 240221-2.pdf (hirosaki-u.ac.jp)
●丸紅、フィリピン財閥アヤラとオーストラリアで蓄電池を共同開発へ
丸紅は3月4日、自社ホームページ上で、「フィリピン財閥アヤラ・グループとオーストラリアでの蓄電池開発で協業する」と発表した。
それぞれの子会社を通じ提携し、フィリピンのマルコス大統領の豪州訪問に伴い締結された。丸紅は将来的に、同事業を豪州で発電事業を手掛ける別の子会社に引き継がせることも検討している。丸紅とアヤラはかねて協力体制にあった。
Ayala Groupとのオーストラリア・蓄電池事業共同開発に関する協力協定締結について (marubeni.com)
●第一工業製薬、電池用接着剤の生産拡充へ
第一工業製薬(京都市)は3月4日、自社ホームページ上で、高容量リチウムイオン二次電池(LiB)の負極用水系複合接着剤の供給体制を 2024 年 3 月より拡充すると発表した。この接着剤の使用により、電池の長寿命化が可能になるとしている。
プレスリリース:2024030401.pdf (dks-web.co.jp)
<海外>
●EUの中国製EV規制、実施に前進か 外電報道
欧州連合(EU)による中国製EVへの規制実現が近づいているようだ。米ブルームバーグ通信が3月6日、「EUの執行機関である欧州委員会が同週、中国製EVに対する中国政府からの補助金について『十分な証拠』を収集したとして、補助金相殺関税および遡及関税の適用を検討していることを明かした」と伝えた。
関連記事:EU、中国産のEVへ補助金関税および遡及関税の検討へ | MIRU (iru-miru.com)
●テスラ、ドイツ工場が操業停止 近隣火災で、環境保護団体による放火の疑い
米EV大手テスラは3月5日、ベルリン郊外の工場の近くにある送電鉄塔の火災の影響で工場が停電したため、操業を停止した。ドイツメディアなどの報道を共同通信が同日に伝えた。工場には延焼していない。ただ、ロイター通信の3月7日報道によると、停電は17日まで続く見込みで、再開時期は未定。
工場周辺では最近、テスラの工場拡張計画に反対する環境活動家らの抗議行動が行われていた。警察は放火の疑いがあるとして調べている。
関連記事:テスラの独工場放火事件、事業に大きな影響 | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:テスラのドイツ工場、放火により閉鎖 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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