週刊バッテリートピックス 「パナとマツダが供給契約」「戸田工業の新電池」など
2024年3月24日~3月30日のバッテリー業界では、日本企業の活発な動きが目立った。パナソニックエナジーとマツダの協業方針が示されたほか、戸田工業のナトリウムイオン電池など新技術の開発も目立った。一方で、クレハが米中対立を背景に中国事業の拡大を断念。中国の寧徳時代新能源科技(CATL)の苦慮も伝わった。
<国内>
●パナとマツダ、円筒形リチウムイオン電池の供給で合意
パナソニックホールディングス(HD)とマツダは3月29日、それぞれのホームページ上で、電気自動車(EV)の車載用円筒形リチウムイオン電池の供給について合意したと発表した。
具体的内容は今後明らかにする。パナ傘下のパナソニック エナジーを通じ、自動車産業と電池産業の持続可能な発展および地域の雇用維持や人材育成などに共に取り組む。両社は2023年6月から協業について協議していた。
プレスリリース(パナHD): マツダとパナソニック エナジー、車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に向けた合意書を締結 | 提携・共同発表 | 企業・経営 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン
プレスリリース(マツダ): MAZDA NEWSROOMパナソニック エナジーとマツダ、車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に向けた合意書を締結|ニュースリリース
●エムケイ、EVバッテリーの交換ステーションの実験開始
タクシー大手のエムケイ(京都市)は3月28日、自社ホームページ上で、EVバッテリーの交換ステーションの実証実験を始めたと発表した。
ガソリンスタンドなどを手掛けるエネルギー大手のENECOホールディングスと協業し、米スタートアップのアンプルの専用ステーションを京都市内に設置する。5分程度で充電済みバッテリーに交換できるとしている。
プレスリリース: Microsoft Word - 【リリース】EV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験の開始について (mk-group.co.jp)
●クボタ、水素燃料トラクタを公開
(クボタの発表資料より)
クボタは3月28日、堺市のグローバル技術研究所で開発している水素燃料電池車(FCV)トラクタの試作機を報道陣に公開した。
クボタ、開発中の「水素燃料電池トラクタ」を初公開 | ニュースリリース | 株式会社クボタ (kubota.co.jp)
●住友金属鉱山、愛媛にLIBのリサイクルプラント建設へ
住友金属鉱山は3月28日、自社ホームページ上で、愛媛県のニッケル工場などの敷地内に、使用済みのリチウムイオン電池(LIB)などから銅、ニッケル、コバルト、リチウムを回収するリサイクルプラントを建設することを決定したと発表した。
関連記事:住友金属鉱山:リチウムイオン二次電池リサイクルプラントの建設を決定 | MIRU (iru-miru.com)
●クレハ、中国での車載電池向け樹脂の増産断念 米IRAで
化学大手のクレハは3月27日、自社ホームページ上で、車載電池用樹脂の中国での増産計画を中止すると発表した。米国インフレ抑制法(IRA)により、中国から米国への電池素材が輸出できなくなることに対応した。
車載リチウムイオン電池の中核部材である正極材のバインダー(接着剤)に使うフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)。中国で180億〜200億円を投じて新工場を建設し、2024年度の稼働を目指していた。
用地は確保したが、建屋の建設には着手していない状態で、計画の中止に伴い約23億円の損失を2024年3月期に計上する。現在の中国工場での生産は続ける。
プレスリリース20240327_Discontinues_PVDF_Facility_Expansion_in_China_Withdraws_from_ML_jp.pdf (kureha.co.jp)
●日本ゼオン、電池安全技術の米企業を支援
化学メーカーの日本ゼオンは3月27日、リチウムイオン電池の安全技術を手掛ける米国スタートアップCoreshell Technologies, Inc.に出資すると発表した。Coreshell の製品の商業化を支援する。
関連記事:日本ゼオン Lib安全性技術の米国スタートアップ・Coreshell 社に投資 | MIRU (iru-miru.com)
●トヨタ、完全子会社化したPEVEを改名
トヨタは3月27日、自社ホームページ上で、3月5日に完全子会社にしたプライムアースEVエナジー(PEVE)の社名を「トヨタバッテリー」に改名すると発表した。
関連記事:トヨタ PEVEを完全子会社化に | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:トヨタ:「トヨタバッテリー」の名で多様な電動車用バッテリーを提供する会社へ | MIRU (iru-miru.com)
●戸田工業、酸化鉄由来のナトリウムイオン電池を開発
戸田工業は3月25日、自社ホームページ上で、国立大学法人鳥取大学との共同研究で、酸化鉄の一種であるナトリウムフェライトを負極と正極に使ったナトリウムイオン電池を開発したと発表した。同様の発見は世界初としている。
戸田工業が独自に開発した酸化鉄の一種であるナトリウムフェライト (NaFeO2,図1)を用いた。ナトリウムイオン電池は、資源が偏在することで供給不足と価格高騰のリスクが存在するリチウム とは対照的に、ほぼ無尽蔵で安く入手できる ナトリウム を用いるため資源と価格の面で有利な次世代蓄電池とされる・
<海外>
●CATL、テスラと米工場設置で協議か 外電
車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、テスラなどの米国の自動車メーカーとの間で、米国工場を建設する代わりに電池技術のライセンスを供与することを協議しているもようだ。3月25日のロイター通信をはじめとする外電が一斉に伝えた。
CATLの曽毓群(ロビン・ゼン)会長が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで明らかにしたという。
同日の米ブルームバーグ通信は、CATLがテスラの米ネバダ州の工場内に小規模な工場を設置しているとも伝えた。曽会長は同工場に機械設備を導入していることを認めたという。CATLは米フォードと米ミシガン州に工場を建設する計画だったが、国家安全上の理由から米政府が反対し、中止になった経緯がある。
●仏ルノー子会社、フランスに電池セルの試験設備を建設へ
フランス自動車大手ルノーのEV子会社であるアンペア(Ampere)は3月25日、自社ホームページ上で、パリの南エソンヌ県にある研究施設で、電池セルの試験施設の建設を開始したと発表した。
プレスリリース(英語): Laying of the fondation stone of the Innovation Battery Cell Laboratory at the lardy technical centre - Ampere.cars
関連記事:欧州からの風:2024年3月#8 仏ルノーグループ、電池セル研究施設の建設へ | MIRU (iru-miru.com)
●スウェーデンのノースボルト、ドイツの電池セル工場が着工
スウェーデンの電池スタートアップであるノースボルト(Northvolt)は3月25日、自社ホームページ上で、ドイツでの新たな電池セル工場の着工式の様子を発表した。
プレスリリース(英語)Start of construction at Northvolt Drei in Heide, Germany
欧州からの風:2024年3月#7 Northvolt、EU支援の恩恵を受けドイツにギガファクトリー建設開始へ | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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