コンゴ、コバルトの輸出規制を検討か 供給過剰に対応、コバルト離れ招くとの懸念も
世界最大のコバルト生産国であるコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)がコバルトの輸出規制を検討しているもようだ。同国からのコバルト輸出の増加を受け、コバルト価格は2023年に3割下落。関連企業はもちろん、同国としても輸出品の価格下落は収入減につながる。しかし、輸出規制は諸刃の剣の面も強く、国内でも議論があるようだ。
■コンゴ産、世界の7割占める
世界のコバルト生産・埋蔵量
(出所:JOGMEC)
米ブルームバーグ通信が4月11日に伝えた。報道によると、コンゴのフェリックス・チセケディ大統領は2月の閣僚会合で、同国が原因になっているコバルト価格の下落を問題視した上で、当時のサマ・ルコンデ首相に、コバルトの「適正価格」を達成するための「輸出割当の導入の必要性」などの検討を指示した。同国のチームが現在、海外の産業界や研究機関から政策の可能性について意見を聞いているという。チセケディ氏の再選後に発足する次期政権に提案書が提出される予定とみられる。
輸出規制案にはもちろん反対もある。現在、電気自動車(EV)向けバッテリーにはコバルトを使わないリン酸鉄リチウム(LFP)電池が急速に広がっている。もし輸出規制を実施すればコバルト離れを加速させ、結局はコンゴ産コバルトの需要そのものが縮小しかねない。
■広がる「資源の武器化」
脱炭素の流れの中で、世界の資源国の間では自国の資源を貿易上で武器化する傾向が強まっている。代表的なのが2020年にニッケル鉱石の輸出を禁止したインドネシアで、単純な資源国ではなくEV完成車までを手掛ける付加価値の高い製造業への拡張を目指しての措置だった。ガリウムやゲルマニウム、黒鉛(グラファイト)などに輸出規制をかけて世界のサプライチェーン(供給網)を揺さぶった中国のような例もある。
ただ、輸出規制がその国が目指す効果を上げるかどうかは未知数だ。インドネシアのニッケルを巡っては密輸が横行し、精錬分野での混乱も目立つ。中国の貿易上の脅しの効果も、ガリウム価格は高騰しているが黒鉛価格には影響は限定的と、まだら模様なのが現状だろう。
■CMOCは沈黙
コンゴのコバルト生産は2023年に中国の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)が増産したことが供給過剰の一因となった。その中国勢は、コンゴのコバルト産業で、物流を含めたインフラに深く入り込む。ブルームバーグは今回の輸出規制を巡り、CMOCと、やはり同国で生産を手掛けるスイス資源のグレンコアにコメントを求めたが、回答はなかったという。
関連記事:中国、コンゴを囲い込み 国有2社が70億ドルのインフラ投資、コバルト生産は世界首位 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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