JOGMEC、ザンビアの日本向け鉱業投資セミナーを開催 鉱山大臣ら講演
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2024年4月16日、虎ノ門ツインビルディング(東京・港区)で、ザンビア共和国の日本企業向け鉱業投資セミナーを開催した。同国のカブスウェ鉱山・鉱物開発大臣が基調講演を行ったのをはじめ、政府高官らが同国の鉱物産業について説明した。
■カッパーベルトに位置、銅生産は世界8位
ザンビアはアフリカ大陸の南部に位置する内陸国。コンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)やモザンビーク、タンザニアなど8か国と隣接する。面積は75万平方キロメートルと広く、Wikipediaによれば、2020年時点の人口はおよそ1838万人に達する。
(出所:JOGMECデータベース)
ザンビアはいわゆるカッパーベルトに位置するため隣国のコンゴと同じく銅の埋蔵量が多く、1960年代から銅生産を主産業としてきた。JOGMECによると、銅の生産量は2020年で約80万トンと世界第6位。銅産業は、同国の実質国内総生産の約10%を占める。他にもリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどを産出し、エメラルドの生産では世界トップクラスだ。
■銅生産量80万トン→2031年に300万トンに
ザンビアにとってかくも重要な銅産業だが、同国は現在、産業の大幅増強を計画中だ。カブスウェ大臣は「銅生産量を2031年に300万トンまで引き上げる」と話した。銅産業の引き上げによって雇用拡大と、工業生産など他産業への波及効果を狙う計画だ。現在はこの目標に向けた小目標を策定・実施している途上で、2022-2027年を開発期間に設定、その一環として外資誘致を目指す。
ローレンス大統領補佐官によると、「外資の投資環境は整っている」。同国は変動為替制度を採用し、株式市場を所有するなど高度な金融システムを持つ。経済は中央主導型だが、民間セクターの動きは活発という。
現在、採掘業者のライセンス改革を実施中でもあり、同国開発庁のンケタニ投資担当部長は「実務部分を担う鉱物規制委員会を2024年に設置した」と話した。新委員会では、マニュアルによる文書管理やオンライン申請など、手続きのデジタル化にも取り組んでいる。
■資本と技術が不足、採掘現状は当局も把握しきれず
もっとも、課題はなお多い。資源が豊富で早くから採掘が行われてきたにもかかわらず、同国の銅産業の発展が十分とは言えなかったのは「資本と技術が不足していた」(鉱山・鉱物開発省のチパシャプリンシパル・プランナー)ためだ。
採掘現場は小規模・零細の企業が多く、「台帳上で採掘ライセンスを所有している4000社超のうち、実際に稼働しているのは100社以下」(チパシャプリンシパル氏)なのが現状だ。休止や実質的に閉山している鉱山が多いうえ、株式市場での投機目的で名義上のみ採掘ライセンスを取得するケースもある。また、逆にライセンスなしで採掘している業者もいるなど、当局も実態を完全に把握しきれていないという。
カブスウェ大臣は「こうした実態を正確に把握し、休止している鉱山を再開させて投機目的の業者を追い出すなど正常化を進めれば、ザンビアの銅産業はもっともっと発展できるのです」と声を張り上げた。
インフラの問題も横たわる。まず、鉱物採掘に必要な電力が圧倒的に足りない。火力発電と水力発電に頼るが、「必要量の4割程度しか調達できていない」(ンケタニ投資担当部長)。内陸国であるため輸出には他国を経由する必要があり、アンゴラ経由で港に出るのが一般的だ。ただ、他国経由の経路も開発中で、ンケタニ投資担当部長は物流についても「高速鉄道や、それに伴う住宅などの設備の整備にも、海外からの投資を充当したい」と述べた。
セミナーではこの後、経済産業省の石井政務官やJOGMC資源探査部資源探査部の宮本氏らが講演、JOGMECの髙原理事長が閉会挨拶を行った。
▶取材を終えて
豊富な資源を抱え潜在力が大きなザンビア。閣僚各氏からは、国を発展させたいという並々ならぬ熱意を感じた。ただ、隣国のコンゴと同じく、特に鉱業分野には中国勢が深く入り込んでいる。セミナー参加者からも「銅の最大の輸出国はどこか」との質問があり、ザンビア側が「中国です」と答える一幕があった。
ザンビアは2023年6月に、63億ドルの対外債務再編で中国を含む主要20か国・地域(G20)と基本合意に達した。2021年のロイター報道では、このうち約60億ドル対中債務で、いわゆる中国の「債務の罠」に落ちた国の1つと見られていた。
(IR Universe Kure)
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