レアアース市場近況2024#8 反発 中国需要改善でネオジム65ドル台に
2024年4月中旬~4月下旬のレアアース市場全体は反発。中国国内の需要がやや改善し、世界のレアアース市場にも明るさが戻りつつある。中国のメーデーに伴う連休の接近も意識されている。ただ、世界的な製造業の回復を織り込むには力不足で、上値ではもたつきもみられる。
■中国のレアアース指数、170台を維持
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が日次で発表しているレアアース指数は4月22日に171.4と、前営業日である4月19日(170.5)から上昇した。同指数は3月19日に153.3を付けたのを底に反発している。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
中国国家統計局が4月16日に発表した2024年1-3月期実質国内総生産(GDP)は前年同期比5.3%増だった。同国が目標として掲げる「5%前後」をまずは達成したことになり、足元の中国経済に対する過度な不安が後退した。
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一方、上海有色網(SMM)も最近の相場反発について「エンドユーザーの需要の若干の回復、低価格鉱石の供給逼迫、大口バイヤーによる調達、トレーダーによる投機活動」といった要因を挙げた。しかし、なお様子見気分も根強く、「市場での引き合いは活発だったものの、実際の取引量は目立った増加には至らなかった」とも指摘した。
■ネオジム65ドル台に上昇、テルビウムやジスプロジウムも高い
中国市況の改善を背景に、磁石向けレアアース価格も反発が続く。代表格である金属ネオジムは4月18日に仲値で$65.3/kgと3月初旬の水準を回復した。3月21日に$60.5まで下げて節目の$60割れが警戒されたものの免れ、上昇が続いている。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムも似た動きで、3月21日の$900/kgを底に切り返し、4月11日に$1030と節目の$1000台を回復。4月18日には$1085を付けた。1月末以来の高値となる。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
3月14日に$328/kgに下落してから横ばいだった金属ジスプロシウムも、4月に入り動きが出た。4月18日には$340に上げ、2月末以来の高値を回復している。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
■ランタンは値動きなし
唯一、金属ランタンは動きがない。3月21日に付けた$3.58/kgを1か月以上も維持している。2005年7月以来18年9か月ぶりの安値水準。超硬向け需要は相変わらずさえず、蛍光体や合金向けのランタンは価格回復のめどが立たずにいる。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
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4月19日
オーストラリア株式市場に上場する資源企業のヴィリディス・マイニング・アンドミネラルズ(Viridis Mining & Minerals) のレアアース回収率が成績を上げたもようだ。同社がブラジルのミナスジェライス州にある Colossus プロジェクトで行った粘土の初期試験では、67% という高い回収率が達成できた。これは世界最高のバルクイオン回収率という。Mining.comなどの外電が4月19日に伝えた。
報道によれば、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムの4鉱種すべてでの平均回収率が、同様のバルクテストを実施した世界の公知の粘土質レアアース鉱床実績を上回ったという。
4月18日
中国国有レアアースの北方稀土(集団)高科技が4月18日に上場する上海証券取引所で発表した2023年12月期決算は、純利益が前の期比60%減の23億7000万元、売上高が10%減の334億9600万元だった。製品価格の減少が響き大幅減益となった。
4月16日
日本の経済産業省と供給契約を結ぶオーストラリア資源大手ライナス・レアアースは4月16日、自社ホームページ上で「同国最大の女性富豪であるジーナ・ラインハート氏の個人会社による持ち株比率が5.82%に達した」と発表した。
関連記事:豪ライナス・レアアース、同国富豪が5.8%出資 MPとの合併再燃か、日本勢に影響も | MIRU (iru-miru.com)
4月12日
中国税関総署が4月12日に発表した中国の2024年1-3月の貿易統計で、レアアース輸入総額は前年同期比37.5%減と、増減率は1-2月の41.6%減から減少率が縮小した。輸出量は11.1%減で、減少率は1-2月の18.6%減から縮小した。
関連記事: 中国のレアアース輸入額、1-3月は37.5%減 1-2月から減少率縮小 国内需要に底打ち感 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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