豪ライナス・レアアース、同国富豪が5.8%出資 MPとの合併再燃か、日本勢に影響も
日本の経済産業省と供給契約を結ぶオーストラリア資源大手ライナス・レアアースは4月16日、自社ホームページ上で「同国最大の女性富豪であるジーナ・ラインハート氏の個人会社による持ち株比率が5.82%に達した」と発表した。出資の裏には米豪の政治的思惑も見え隠れする。ゆくゆくは日本勢の態度も問われそうだ。
■数日間に合併破綻した2社の株式をそれぞれ購入
ライナスの株主公表資料:02796143.pdf (weblink.com.au)
発表によると、ジーナ氏は個人会社であるハンコック・プロスペクティング社を通じてライナスの発行済み株式5400万株超を保有する。上場企業の場合、通常持ち株比率が5%を超える大株主を開示する義務がある。
英フィナンシャル・タイムズなどの外電の4月17日報道によれば、同社は4月12日にオーストラリア株式市場(ASX)でライナス株660万株を4000万豪ドル強で追加購入した。同社は2023年末から定期的にライナス株を購入していたという。
実は、ジーナ氏は米同業のMPマテリアルズコーポレーションの発行済み株式も5.3%保有する。ロイター通信は4月10日、ハンコック・プロスペクティングがMPの発行済み株式のうち880万株を保有していることが米当局への提出書類から分かったと伝えた。ジーナ氏は、数日間の間にライナスとMPの2社に追加出資したことになる。両社は2月に合併協議が破綻したばかりだった。
関連記事: 豪ライナス・レアアース、米MPとの提携交渉が破綻 日本顧客など持ちメリット薄く | MIRU (iru-miru.com)
■米豪レアアース供給網構築か、その時日本は
フィナンシャル・タイムズをはじめとする外電の多くは、この動きについて、レアアースをめぐる中国依存からの脱却に向けた、米豪のサプライチェーン(供給網)構築への布石との見方を伝える。忘れてはならないのは、ライナスには経済産業省を中心とした日本勢も2023年3月に出資している点だ。ライナスとMPの合併が実を結ばなかった背景には、日本への供給体制が確立されているため、ライナスにとって合併はうまみがなかったとの見方が多い。
関連記事: 重希土類 日本初となる権益獲得 JOGMECと双日が豪企業に出資 | MIRU (iru-miru.com)
もし、経済的な効果ではなく政治的思惑から、ライナスとMPが結局は合併した場合、日本勢はそこにどう絡むか。米豪両社の動きを注視する必要がありそうだ。
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/06/16 レアメタル千夜一夜 第46夜 レアアースよりも足元で深刻な元素Sb
- 2025/06/16 レアメタル千夜一夜 第45夜 値上がり率N0.1のアンチモン
- 2025/06/16 豪Livium社 レアアースリサイクル推進へ 複数の抽出技術開発企業と協議中
- 2025/06/16 電子部品輸出入Report#120金属製磁石輸入 2025年輸入量増加
- 2025/06/16 光ファイバ輸出レポート#6 昨年の落ち込みから一転2025年輸出量増加
- 2025/06/16 産業用電子機器輸出入レポート#71パソコン輸入 台数17か月連続増加するも平均単価急落
- 2025/06/14 インド、日本向けレアアースの輸出を停止か 外電報道、自国分確保を優先
- 2025/06/13 米国、サモア沖の海底資源探査に一歩 鉱物資源の取り合いで自国領内の資源に着目
- 2025/06/13 神鋼商事、田口金属と合弁会社設立検討へ基本合意-非鉄金属スクラップのリサイクル事業
- 2025/06/13 レアアース市場近況2025#11 横ばい、米中交渉見極めで身動き取れず