ブラックマス市場近況 2024#3 長い低迷期を経てようやく市場回復

LIB(リチウムイオンバッテリー)の解体~破砕後のブラックマス(以下、BM)の市場は昨年夏、さらにいうなれば2022年の秋から下落と需要縮小を続け、多くのリサイクル関係者が少なくない損失を被ったシーズンだったが、今年の2月以降、炭酸リチウム価格の下げ止まりと中国はじめとした電池メーカーの原料在庫補充の買いも入りBM相場も上昇に転じてきている。
ここ1年のブラックマス(NCM622 $/kg)相場(青色)と中国の炭酸リチウム相場(99.5% RMB/ton 赤色)の推移
ブラックマス(ニッケル、コバルト)の現在の評価率は平均すると70~75%まで上昇。一時期は50%という低評価だったが、そこからすると20ptの上昇、となっている。ブラックマスの処理方法、不純物の有無によっても価格はばらつきがあるが、MIRU測定値では4月末現在でキロ当たり6.0ドル~6.5ドルとみられる。
国内でLIBスクラップを月間200トン程度扱うリサイクラーによると
「ようやく回復してきた感があります。炭酸リチウム価格の上昇、ニッケル相場の上昇もありますが、全く買い気のなかった中国のLIBメーカーなどが原料在庫が少なくなったことで、マレーシア、タイ、フィリピンなどでのBMバイヤーからの引き合いが増えてきた。伴って掛け率も高いもので75%まであがっている」とのこと。
また、中国は内モンゴルでLIBスクラップを扱うリサイクラー(中国系企業)の担当者に聞くと
「中国の電池メーカー、湿式精錬業者の買いは増えてきている。在庫補充の買いですね。コバルト酸リチウム電極粉末におけるコバルト酸化リチウムの係数は77%、コバルト酸リチウム電池粉末におけるそれは75%。中国はLFPのBMも買っている。リチウムメインの評価。湿式精錬工場では、生産ラインの稼働を維持するために、徐々に高価なBMを購入している。市場取引価格は徐々に上昇傾向にある。しかし、ヘッジやOEM需要のない一部の湿式プロセス工場は、BMの係数とコストとの間に重大な矛盾があり、生産のためにコバルト中間生成物(MHP)を混合することを選択したり、塩水、電解質、ニッケルコバルトスラグ、および粗炭素の購入に切り替えたりすることを選択している」とのこと。
中国の電池市場では原料供給はひっ迫している状況。2022年秋、冬から長い低迷期にあったLIBリサイクル業界はようやく訪れた春だけに売りは慎重。多大な損失を被ったリサイクラー、トレーダーは特に慎重。BM市場はしばらく堅調に推移すると考えられる。
(IRUNIVERSE/MIRU)
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