豪州、鉱業巻き返しへ 予算案で再生エネなどに2兆円、重要鉱物に税優遇 業界歓迎
オーストラリア政府は5月14日、2024会計年度(2024年7月-2025年6月)の予算案を発表した。今後10年程度で227億豪ドル(約2兆3600億円)を国内製造業の振興や再生可能エネルギー分野の強化に投じる。業界団体も歓迎の意を表し、官民挙げて低迷するオーストラリアの鉱業の巻き返しを目指す。
■重要鉱物31種を税優遇
豪予算案プレスリリース(英語):Investing in a Future Made in Australia | Budget 2024–25
予算案では、インフレ抑制や生活困窮者の救済、住宅建設などを盛り込んだ。
鉱業分野では、2027年度(2027年7月-2028年6月)から2039年度にかけて、31種類の重要鉱物の加工・精製に70億豪ドル相当の税制優遇を適用し、再生可能水素の製造にも67億豪ドル相当の税優遇措置を導入する。さらに、国内の太陽光パネル生産への投資と電池のサプライチェーン(供給網)整備には15億豪ドル相当の支援を提供する。「経済安全保障を強化する可能性を実現する」ともし、鉱業分野の中国依存からの脱却もにおわせた。
■業界団体は手続き簡素化など評価
同国の鉱業業界団体であるオーストラリア鉱物評議会(MCA)も同日、声明を出した。声明中でMCAのタニア・コンスタブル最高経営責任者(CEO)は予算案について「オーストラリア経済にとっての鉱業の重要性を改めて浮き彫りにした。(これまで)財政黒字を維持できたのも、鉱業の貢献によるところが大きい」と指摘。「外国投資審査委員会(FIRB)および外国調達・買収法(FATA)に基づく規則とプロセスの合理化は外資引き入れに役立つ」と評価した。
一方で、「30%の法人税率は他国に比べ割高で、外資の投資引き入れの障壁となる。環境認可の不確実性、エネルギーコストの高騰、労使関係政策の変更も投資を思いとどまらせる」と指摘。「オーストラリアの国際競争力を向上させ、必要な投資を呼び込むために、より多くのことを行う必要がある」とした。
MCAプレスリリース(英語):Mining continues to underpin the Australian economy - Minerals Council of Australia
■コスト高で外資離れ、政府も財政赤字
鉱物価格の低迷などを背景にオーストラリアの鉱業は不振に苦しむ。光熱費や人件費などが他国に比べ割高との見方から、世界の資源大手が同国での資源開発を取りやめる動きも相次いでいる。2023年には業界団体が政府に「直訴」。資源大臣が来日してアピールするなど投資誘致に励んでもいる。
関連記事: 豪鉱業が経済危機 業界団体が政府に支援要請、資源大手の事業見直しも相次ぐ | MIRU (iru-miru.com)
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大規模投資を表明したとはいえ、政府も内情は苦しい。2024年会計年度は3年ぶりに財政赤字を計上する見通しとなった。同会計年度の赤字額は283億豪ドルと実質国内総生産(GDP)の1%相当となり、その後の12カ月で428億豪ドルに膨らむ見通しとした。
(IR Universe Kure)
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