豪鉱業が経済危機 業界団体が政府に支援要請、資源大手の事業見直しも相次ぐ
オーストラリアの鉱業の経済的困窮が深刻化している。ニッケルやリチウムなどの鉱物価格の世界的な下落で生産が立ち行かなくなる企業が続出。業界団体が当局との交渉に乗り出している。一方で、世界の資源大手は同国での生産施設の閉鎖や事業中止などを進め、同国の鉱業産業全体への影響も懸念され始めている。
■ニッケル4割、リチウムは8割下落で生産立ち行かず
英ガーディアンなどの外電の1月25日までの報道によると、豪州の鉱業企業の業界団体である鉱業探査会社協会(Association of Mining and Exploration companies、AMEC)は1月25日、同国西部のバースで行われた危機会議で、政府に対し税金とロイヤルティの軽減および緊急の資金支援を要請した。会議には業界の代表者ら数10人も参加し、鉱業相などと話し合ったという。
豪州では最近になり、資源大手による精錬所の閉鎖や採掘の中止が相次いでいる。
最近の豪州での資源大手の事業停止
(各報道をもとにIR Universeが作成)
このうち、リオ・ティントとアルコアは操業数十年の古いアルミナ精錬所を閉鎖したもの。世界的に脱炭素の流れが加速する中、旧来型の鉱業であるアルミの生産を縮小し付加価値の高い重要鉱物の生産に事業の中核を移動させる意図があるだろう。
ただ、最近の2件、ファースト・クォンタムと豪BHPはニッケル価格の下落によるコスト割れからの生産停止だ。ニッケル価格は前年の同時期に比べ4割、リチウム価格は8割下落した。
過去1年間のLMEニッケル価格の推移(US/ton)
過去1年間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% China)(RMB/mt)
ロイター通信の1月22日の報道によると、BHPは同選鉱所にニッケルを供給するWyloo メタルズが操業を停止したため、選鉱も停止せざるを得なかったという。前出のAMECは政府に対し、破綻の危機に瀕している小規模な資源会社に対しては、完全に倒産するのではなく、後日操業を停止して生産を復活させることができるよう財政支援を求めたとも伝わり、特に中小型の資源会社の経営は危機的な状況にあるようだ。
■インフラ含めてコストは高い
世界の資源大手が豪州事業を見直している背景には、豪州のコスト高もありそうだ。世界の生産事情に詳しいある経済記者は「南米やアフリカ、東南アジアなどに比べれば、豪州は人件費はもちろん、水や電気などのインフラもどうしても高くなる」と話していた。コスト高はもちろん、リオ・ティントやアルコアの事業配分の決定にも影響しただろう。
産業の停滞は雇用面での不安定化にもつながり、国や地域全体の安定にも影響する。鉱業の潮流の変化と不安定な価格、そしてコスト面での不利。多くの問題を前に、豪州の鉱業産業は節目に立っているようだ。
(IR Universe Kure)
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