銅価格一服、投機資金は他の金属へ アンチモン最高値、アルミや亜鉛、鉛も上昇
空売り筋の損失覚悟の買い戻し「ショートスクイーズ(踏み上げ)」に代表される投機資金の銅相場への流入が一服し始めている。ロンドン金属取引所(LME)での銅3か月先物は5月30日に$1万144/tonと、5月20日の過去最高値($1万930)から7%程度安い水準となった。反面、アルミなど他の金属一部は好調で、資金の流れが変り始めた可能性がある。
■「銅を売ってアルミ買う」で開く「ワニの口」
過去10日月間のLME銅とアルミ価格の推移($/ton)
5月30日のLMEアルミは3か月物が$2710/tonを付けた。5月29日には$2741に上げており、2022年6月以来の高値圏にある。現物価格を見ても、この10日間では銅が下落しアルミが上昇する展開で、チャート上ではいわゆる「ワニの口」が開いた。
実際、金属ネットニュースのferroalloynetは5月31日、「投資家は今週、銅を売り、アルミニウムを買っている」との金属アナリストの話を伝えた。「アルミニウムはアウトパフォームしており、追い上げを狙っている」という。
好調なのはLMEで取引される他の主要金属も同じだ。鉛は2022年4月以来、亜鉛も2023年2月以来のそれぞれ高値圏にある。
過去3か月のLME鉛価格の推移($/ton)
過去3か月間のLME亜鉛価格の推移($/ton)
上昇はこうしたメジャーな金属だけではない。マイナーメタルの一部にも投機買いは流れている。アンチモンは5月23日に仲値$19.250/tonと、過去20年間での最高値を付けた。インジウム価格も9年ぶりの高値圏に上昇している。
過去20年間のアンチモン価格の推移($/ton)
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■ショートスクイーズ→ロングベアハグ?
銅価格を巡っては、5月24日に英経済紙フィナンシャルタイムズ(FT)が「今後4年ほどで1トン当たり4万ドルになる」とのヘッジファンドトップのインタビューを伝えるなど、先高観が根強い。パナマの鉱山閉鎖などを背景に供給ひっ迫が続くとの見方が強く、投機買いを誘っている。
関連記事:Americas Weekly 21ショートスクイーズで荒れる銅市場 「1トン4万ドル」は本当にあるのか | MIRU (iru-miru.com)
そんな中、5月28日のmining.comは、銅価格は「ショートスクイーズからロングベアハグ(売り惜しみ・停滞)に変わる危険にさらされている」との見方を伝えた。
報道によれば、豪マッコーリーによる最新のレポートで、銅の9月期の平均価格は$9800と、$1万を下回る水準に予測されているという。スクラップによる供給が需給バランスを一定程度整える可能性があるためで、FTが伝えたようなやみくもな上昇継続は起こらないとの見立てだ。 マッコーリーはまた、中長期の銅需要についても、「(脱炭素などの)エネルギー転換は、世界の銅需要拡大の主要な原動力となるものの、必ずしも全体的な加速につながるとは限らない」との見方も示したという。
(IR Universe Kure)
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