仏大統領、カナダ首相にロシア産チタンの制裁緩和を説得か エアバス救済で、消息筋
フランスのマクロン大統領が、カナダのトルドー首相に対し、ロシアのウクライナ侵攻で制裁対象になっているロシア産チタンの輸入緩和を説得していた模様だ。ロイター通信が5月30日、消息筋の話を伝えた。カナダに工場を持つ仏航空エアバスのチタン需要を守るためで、航空機向け合金を巡る世界の駆け引きが浮き彫りになった形だ。
■外相の訪問前に電話
エアバスはカナダでA220などの航空機の組み立てを行っている。報道によると、説得が行われたのは3月の両首脳の電話会談でのこと。フランスのガブリエル・アタル首相のカナダ訪問を控えた時期で、訪問したアタル首相もカナダで再度この話題を取り上げたという。トルドー首相は当初は拒絶したが結局は4月下旬、カナダはエアバスに、カナダ工場でのロシア産チタンの使用を認めた。
■チタン合金、ロシア社が世界最大
航空機向けチタン合金はかねてロシアの国営企業VSMPO-AVISMAが世界シェアトップで、特に大型航空機のエンジン部品や着陸装置に使われてきた。カナダをはじめ西側諸国は、2022年にロシアがウクライナに侵攻した際にVSMPO-AVISMAを制裁対象とし、ロシア産チタンの輸入も止めていた。
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ロシアの侵攻の長期化にガザでの紛争なども加わり、軍用機を含めた航空機需要は高止まりしている。Cobalt Institute が4月に発表したレポートによると、エアバスの2023年の航空機生産需要は前年比11%増えた。AI調査会社のreport Linkerが2023年末に発表したレポートでは、エアバスは2025年のチタン需要を2021年比で80-100%増と予測しているという。
航空機向けスポンジチタン価格そのものは、過去1年半ほどは$12.5/kgで落ち着いており、ろうばい的なひっ迫感は感じられない。ただ、水準としては過去最高値圏にあり、需要はまだまだ堅調とも見て取れる。
過去10年の航空機向けチタン価格の推移($/Kg)
マクロン大統領は中国と良好な関係を保つ一方でウクライナによるロシア領攻撃容認を主張するなど、米国などとは一線を引いた外交姿勢を打ち出す。エアバスとチタンを巡る一件は国益を守ったとも言える。しかし、経済制裁の難しさと西側諸国の足並みの乱れを象徴するケースにもなり、カナダのチタンを巡る規制緩和は、ウクライナ当局による批判を招いた。
(IR Universe Kure)
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