インドとメキシコ、総選挙後に通貨安 現状路線も足場弱く、豊富な資源や可能性に期待
インドで6月4日、メキシコでは6月2日にそれぞれ大統領選が行われた。いずれも現政権の方針を引き継ぐ結果となったが野党の健闘も目立ち、インドは株と通貨が、メキシコも通貨が選挙後に下落。世界の不安なまなざしがあらわになった。資源はもちろん、人口など可能性も大きいが、問題も山積している。
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■インド、「重要鉱物サミット」開催もインフラに不安
(インド政府ホームページより)
インド議会下院の選挙は6月4日に開票が始まり、選挙管理委員会によれば日本時間5日午前9時までに543議席すべてが確定。モディ首相率いる与党、インド人民党を中心とした与党連合が293議席を獲得し過半数を維持した。ただ、インド人民党単独で240議席にとどまった一方、野党連合が出口調査の予想に反して大きく議席を伸ばした。
この結果を受け、6月4日のインド株SENSEXは一時7万837と前日比8.5%下落。5日も軟調に推移している。通貨ルピーも対米ドルで急落する場面があった。
モディ政権の間にインドは高い成長率を達成し、2023年の実質国内総生産(GDP)は前年比8.2%伸びた。しかし、国内の経済格差が進んだほか、宗教間の不平等にも不満が強く、海外企業が投資する際にもインフラ面などへの不安は多い。鉱業分野に対しては近年、積極的で、4月に「重要鉱物サミット」を開催したばかり。ボーキサイトやクロム、マンガンなどの資源を持つ。
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■メキシコ、リチウム国有化に変更なしか
(メキシコ国章)
一方のメキシコは、6月2日、女性初の大統領として、現政権の流れをくむクラウディア・シェインバウム氏が当選した。しかしこちらは麻薬組織の蔓延などの治安悪化や米国への難民流入など、より深刻な問題を抱える。選挙期間中にも候補者が30人以上殺害されるなど不穏さはぬぐえず、選挙後もメキシコペソは6月4日まで対米ドルで、2日連続で下げた。
メキシコ自体は北西部のソノラ州に豊富なリチウム資源を抱える。同地域を巡っては2023年2月に国営企業のみによる開発とし、民間企業への開発コンセッションは付与しないと決定した。
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金や亜鉛、鉛などの露天掘り採掘も古くから営むが、当面は大きな政策の変化を予測する声は少ない。6月3日のmining.comは政権交代後の同国の鉱業政策について「変わる可能性はごく小さい」との識者の見方を伝えた。
石油・天然ガス開発を巡っては、かねて外資参入に関する憲法改正が論議されており、議論が進む可能性があるという。また、メキシコを巡っては中国企業が米インフレ抑制法(IRA)の迂回地として工場を設置していることなどから、米国のメキシコ製品への関税の行方も気にかかる。
(IR Universe Kure)
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