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Americas Weekly 25 レアアースの独占打破を目指し北米、欧州、南米で「中国包囲網」が広がる

 レアアースの中国の独占状態を切り崩す動きが加速している。カナダではカナダ産レアアースの中国企業への販売を政府が阻止し、州の機関が採掘業者から貯蔵分を買い取ることとなった。ノルウェーでは欧州最大といわれるレアアース鉱山が見つかった。レアアース埋蔵量で世界3位のブラジルでは、同国初のレアアース鉱山での商業生産がスタートした。レアアースの「勢力図」に変化の胎動が見えてきた。

 

 カナダのノースウエスト準州でレアアースを採掘しているオーストラリアの鉱山会社バイタル・メタルズは6月17日、レアアースの探鉱・精錬を手がける中国の盛和資源に売却する予定だったレアアースを、カナダの公的機関に売り渡すことを決めた。

 

 シドニーに本社があるバイタル・メタルズは、オーロラの鑑賞地として世界的に有名なノースウエスト準州イエローナイフの南東約110キロにあるネチャラチョでレアアースを採掘している。2023年12月、採掘した貯蔵分を盛和資源に約260万カナダドル(約190万米ドル)で売却することを決めた。同時に盛和資源は、バイタル・メタルズの株式の9.9%を取得した。

 

 カナダ政府は、レアアースが中国に売却されることだけでなく、バイタル・メタルズに中国企業が出資したことに強い危機感を示した。カナダの外国投資法では、カナダ経済に有害だとみなされる投資や取引について、政府に阻止する権限を与えている。バイタル・メタルズの取引についてカナダ政府は、カナダの安全保障上、好ましくないとして、取引の無効化を探り、バイタル・メタルズとの合意に至った。

 採掘された貯蔵分の正確な分量は明らかになっていないが、カナダの非営利組織のサスカチュワン研究評議会(SRC)が、盛和資源との取引額よりも高い約300万カナダドル(約220万米ドル)で買い取る。

 サスカチュワン研究協議会は、鉱石処理、分離、精錬を一体化した北米初のレアアース処理施設を建設中で、新施設でバイタル・メタルズから購入したレアアースを精錬する予定だ。

 

 オックスフォード・エネルギー研究所によると、中国は世界のレアアース採掘の約70%を、精錬の約90%を担っており、事実上、レアアースを独占している。

 カナダ政府は2022年に、国家安全保障への懸念を理由にリチウム関係の中国系企業3社に対し、所有するカナダ国内企業の株式の売却を命令するなど、活動を制限する措置をとってきた。レアアース分野で中国の動きを阻止したのは初めてだ。

 民間の取引に政府が介入する形だが、バイタル・メタルズは「カナダ政府はネチャラチョ鉱区を、国の繁栄に貢献する戦略的資産として認識している」とコメントした。

 バイタル・メタルズのジョーディー・マーク最高経営責任者(CEO)は、一部のメディアに対し、今回の合意を取りまとめる上で、カナダのジョナサン・ウィルキンソン天然資源相が大きな役割を果たした、と述べている。AFP通信は「ウィルキンソン天然資源相が、鉱物をカナダ国内に留めさせるための取引を推進するよう介入した」との関係者の話を伝えている。

 

 カナダ政府は、天然資源分野での中国によるカナダ国内への投資に神経を尖らせており、政府による「取り締まり」が強まっているという。ウィルキンソン天然資源相は「対中強硬派」として知られ、今後を握るキーパーソンとして、エネルギー業界から注目されている。

 欧州では、欧州大陸最大のレアアース鉱床が見つかった。

 

 レアアース・ノルウェーは6月6日、オスロの南西約110キロの地点で開発を続けてきたフェン・カーボナイト・コンプレックスが、欧州最大のレアアース鉱床であることが判明したと発表した。880万トンの希土類酸化物(TREO)が埋蔵しているとみられる。

 レアアース・ノルウェーはこの鉱床を「欧州の安全なレアアース・バリューチェーンを支えることができる真に変革的な資産だ」と評価している。アルフ・ライスタッド最高経営責任者(CEO)は、2030年までに欧州連合(EU)のレアアース年間需要の約10%を抽出することが当面の目標であることを明らかにした。

 

 レアアースのほとんどを中国から輸入している欧州にとっては、中国に頼らないレアアースの獲得が至上命題となっており、今回の発見は「事態を根本的に変えるもの」として期待が高まっている。

 

 ブラジルでは2024年1月、同国初のレアアースの商業生産がスタートした。鉱山会社セラ・ヴェルデがゴイアス州ミナスにあるペラ・エマ鉱床で始めたもので、フル生産されれば、電気自動車のモーターや風力発電装置に必要な高効率永久磁石の製造に使用される希土類酸化物を、年間で約5000トン生産できることが見込まれる。2030年には採掘量を2倍にする計画だ。

 

 ブラジルは、レアアースで世界3位の埋蔵量があるとされる。割安な労働費などレアアース生産に好条件がそろっているが、マーケットでレアアースの金属価格が約70%下落し、世界の金融機関からの融資が受けられず、レアアース産業はスタートさえ切れなかった。

 

 しかし、米国が2027年までに中国に頼らないレアアースの独自の供給網構築を目指すなど、世界規模で再びレアアースが注目されてきたことから、ブラジルのレアアースに多くの視線が向けられるようになった。

 ブラジル政府はレアアースの採掘を含む重要鉱物のプロジェクトに大型予算を付けた。モーターやバッテリーなど最終製品を製造する産業の育成までつなげる方針だ。

 

 

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Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。

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