アングロアメリカン泣きっ面に蜂 炭鉱で火災、BHPからの買収かわし資産再編目指すも
英資源大手アングロアメリカンは6月30日、ホームページ上で、「豪クイーンズランド州の炭鉱で石炭ガス火災が発生した」と発表した。同社は5月に豪同業BHPからの買収要請を何とかはねのけたばかり。脆弱な財務状態を反省し、石炭資源の売却など財務再編を始めたところに、資産価値が低下しかねない事態が発生した。泣きっ面に蜂とはこのこと—。
■地下火災、中に入れるのに数か月
プレスリリース:Anglo American suspends production at Grosvenor steelmaking coal mine | Anglo American
アングロの発表によると、6月29日に同社のグロブナー製鉄炭鉱で地下火災が発生した。怪我人はなく、同炭鉱は現在操業を停止している。ただ、消火活動が続いており、炭鉱の損傷も予想されるため、安全に炭坑内に入れるまでには数か月かかりそうだという。
アングロは2024年上半期に約800万トンの石炭生産を見込み、このうちグロブナーの生産分は約230万トン。2024年通年では1500万-1700万トンの生産を予定しているが、このうちグロブナー産は5分の1程度の約350万トンを占める見通しだった。
■2020年にも同じ炭鉱で火災
アングロはBHPに買収を迫られていた5月14日、ホームページ上で新たな事業戦略を発表。その中で、石炭資産については「売却予定」とし、「買い手を募っている」と説明していた。市場では、石炭資産の売却価格は総額44億ドル程度と見積もられていた。
プレスリリース:Anglo American accelerates delivery of strategy to unlock significant value | Anglo American
しかし、今回の火災でアングロのこの目論見は大きく躓くことになりそうだ。7月1日の英フィナンシャルタイムズによると、ジェフリーズのアナリストは火災によって石炭資産の売却交渉が「想定よりも長引くことになるだろう」との懸念を示した。もちろん減産も打撃で、米ブルームバーグ通信は「(火災は)アングロの株価と資産売却に重くのしかかることになる」とのRBCキャピタル・マーケッツのアナリストの見立てを伝えた。7月1日のロンドン市場でアングロ株は前週末比4%下落した。
さらに致命的なのは、グロブナー炭鉱での火災が2度目だということだ。1度目は2020年で、作業員5人が負傷した。アングロは安全管理面でも株主や世間から厳しい目にさらされることになる。
BHPは5月末にアングロ買収をあきらめたが、6か月後には再び買収要請をする権利を保有する。資産価値に傷が付いた以上、次は前回よりも厳しい条件での買収要請にさらされてもおかしくはない。
関連記事:BHP、アングロ買収を断念 買収価格引き上げも度重なる拒否、7兆円買収案は白紙に | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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