LME、4-6月の出来高10年ぶりの多さ ニッケルけん引、価格急落事件の影響克服へ
ロイター通信などの外電が7月5日までに伝えたところによると、ロンドン金属取引所(LME)の2024年4-6月期の1日当たり平均出来高は約73万ロットと前年同期比27%増え、10年ぶりの高水準となった。LMEは2022年2月に起きたニッケル詐欺事件の影響が響いていただけに、関係者には劇的な回復との驚きが広がっている。
■ニッケル出来高7割増
報道によると、LMEの4-6月期のうちニッケルの出来高が77%増えて全体をけん引した。銅の出来高は27%増だった。
足元のLMEニッケル出来高の推移
(出所:LMEホームページ)
LMEの直近データでみると、ニッケルの1日当たりの出来高は5-6万ロット程度。月次資料では、最新発表の5月のニッケルの先物出来高の平均は6万609ロットで、2023年5月の3万7746ロットからほぼ倍増した。2024年に入ってからの回復が目立つ。
在庫で見ても、6月のLMEニッケルの在庫は9万5034トンと前年同月の3万8850トンから3倍近くに伸び、取引が活発化し始めている様子がうかがえる。
過去10年間のLMEニッケル在庫の推移
■ニッケル騒動で取引所の信頼失墜
LMEは2022年3月にニッケル価格が急騰、取引を一時停止する「ニッケル騒動」を引き起こし、取引所としての信頼が失墜する事態となった。LMEの月次資料では、事件発生前の2022年2月のLMEニッケルの出来高は8万5000トンを超えていた。それが事件後の同年4月には4万ロット台に急減。ニッケル取引に制限がかかったのに加え、関係者が同取引所での取引から逃げ出した。
関連記事:揺らぐLMEのニッケルベンチマークへの信頼度 | MIRU (iru-miru.com)
LMEはその後、2023年になってニッケル取引の復活に向けた改革を発表。英国の金融行為監督機構(FCA)や裁判なども進んだ。さらに1年が経ち、ようやく信頼も回復しつつあるようだ。前述のとおりニッケル出来高は事件前の8万ロット超には及ばないものの、5-6万ロットには増えており、7-8割程度の回復と言える。
LMEニッケル価格も5月に3か月先物価格が$2万/tonの大台を回復するなど底堅さが目立ってきた。信頼回復は道半ばではあるが、着実に進んでいるようだ。
過去3年間のLMEニッケル価格の推移($/ton)
(IR Universe Kure)
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