中国で銅在庫が急増 LMEでも増加、中国発デフレ輸出が銅にも波及か じわり警戒
中国で銅の在庫が増えている。上海先物取引所(SHFE)での在庫は6月に31万9521トンと、前年同月の6万8000トン程度から5倍に増えた。7月は既に32万トンを超えている。ロンドン金属取引所(LME)の銅在庫も増えており、関係者の間では中国の銅余剰が輸出増加を生み、国際価格の押し下げ要因になるのではないかとの懸念が浮上している。
■中国、不動産不況で銅も余剰
過去5年間のSHFE銅在庫の推移
SHFEの銅在庫は2024年1月までは5万トン程度で推移していた。それが2月に18万トンに急増。3月以降は30万トン前後の水準で推移している。水準としては2020年3月以来4年ぶりの多さだ。
押し出されるようにして、LMEの銅在庫も増えている。7月の銅在庫は20万トンに乗せ、2021年9月以来の多さとなっている。
過去5年間のLME銅在庫の推移
7月11日付のロイター通信によると、LMEの7月の増加分の大部分は、中国からの輸出に最も近い韓国と台湾の倉庫だった。
中国は本来、銅に関しては純輸入国。しかし、6月19日の米ブルームバーグ通信は「中国5月の未加工銅・銅製品の輸出量は15万トン近くと、前年同月の2倍に増加し、2012年に記録した従来の過去最高を上回った」と伝えていた。2024年に入ってからは輸出国に転じている。不動産市況の改善が見られない中、「中国国内の銅需要が戻らず、余剰分を輸出している」(ブルームバーグ)との見方が濃厚だ。
■LME銅は5月から1割下落
在庫増加が供給超過懸念を誘う中、銅相場は頭打ち感が出ている。SHFEとLMEの銅価格はともに5月下旬に過去最高値を更新した後、下落に転じた。LMEの銅3か月先物価格は7月11日に$9860/tonと既に節目の$1万を割り込み、5月20日に付けた過去最高値($1万930)から10%近く安い水準にある。
過去半年間のLMEとSHFEの銅相場の推移($/ton)
世界は既に、鉄鋼や電気自動車(EV)などでの中国発のデフレ輸出に悩む。銅の決済には取引通貨である米ドルの金利動向が強く影響するとはいえ、中国からの輸出増は国際的な銅の需給バランスに影響せざるを得ない。鉄鋼などと同じ流れが銅にも波及しつつあるとの懸念が、じわりと広がっている。
(IR Universe Kure)
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