鈴木商会 アルミドロスから高純度の水素生成 着々と進行中
北海道を代表する総合リサイクル企業の鈴木商会。MIRUでも何度か取り上げているが、今回は苫小牧アルミ工場(北海道苫小牧市)にて行っている低濃度アルミドロス(灰)から水素、アンモニアのグリーンエネルギーを生み出す実証プラントを見学した。当日は同社のESG推進室の熊坂氏が案内してくれた。
(関連記事)
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このプロジェクトは、環境省の2022年度地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル(CN)技術開発・実証事業の採択を受けたもので、7者の産学協同プロジェクト。水素やアンモニアのほか、水酸化アルミニウム、触媒を生産する世界初の技術で、カーボンニュートラルの実現に資するというもの。
現在の実証プラントでは、アルミ工場の合金生産過程で発生するアルミドロス(アルミ分20%)に水を加えて実際に水素 、アンモニア、水酸化アルミニウムを生成している。残渣となる酸化アルミも触媒担持向けで使用できればまさに廃棄物ゼロ、となる。このプラントで使用する苛性ソーダは循環利用する。この実証プラントが設置されたのが2023年の11月。この反応装置は早稲田大学が2005年から2007年に行った本庄・早稲田地域での G水素モデル社会の構築に関する技術開発で参画メンバーが開発したもの。
このプラントで発生する水素は99.999%の高純度水素で、水素ボンベに充填されている。半導体製造工場でも使用できるクオリティ。近隣に建設予定のラピダスに供給することも視野に入れている。
アルミ分20%のアルミドロス1トンから250立米の水素が得られるとのことで、先々には年間5000トンのアルミドロスを水素、アンモニア、水酸化アルミの製造に充てることを計画している。ここでの課題は、水素の保管と運搬。特に水素を使うところが離れていれば運搬コストがかさむため、例えば、反応装置を水素ユーザーの現場に設置することも企図しているとのこと。
(原料のアルミドロス)
同時に苫小牧アルミ工場(MUG事業部)の橋本工場長にも最近のアルミ合金の生産、スクラップの仕入れなどについて聞いた。現在、苫小牧工場でのアルミ合金生産量は800~1200トン/月。反射炉1基、回転炉2基を使用。生産能力は2500トンだが、コロナ禍の需要減退期に減産。需要に見合った生産体制となっているが、最近は国内アルミダイカストメーカーなどからの引き合いは強いという。
しかしながら、今の課題として、生産量を上げたくとも、現場の人手不足と原料スクラップ不足で思ったように生産量は上げられないという。鈴木商会の苫小牧工場ではアルミスクラップの仕入れは道内。他に原料として輸入塊もあるが、メインはスクラップ。
3~4年前から北海道でも中華系スクラップディーラーが増えている。一説には40社が出てきているという(2024年7月現在)。アルミスクラップは全体的に入りが落ちており、例年に比して3割は落ちている模様。
無論、道内の経済活動の減退による発生量の低下もあるだろうが、発生量は落ちているのに業者は増えての取り合い、という構図は全国各地でみられる現象。それが北海道にも及んでいるようだ。
千葉、茨城、山梨といった首都圏で「ヤード規制」が強化されて、福島、東北、と「北上」している中華系ヤードディーラーの行く先は北海道にたどり着くこことになるのだろうか??
(IRUNIVERSE/MIRU YT)
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