タングステン市場近況2024#7 下落 4月の水準に逆戻り、オフシーズンで取引少ない
2024年7月のタングステン市場は下落した。中国の環境査察に伴う価格上昇のピークを6月に終え、7月いっぱいは調整が進んだ。ベンチマークであるAPTの国際価格をはじめ多くの形態で4月上旬から5月半ばの水準に逆戻りし、適正価格を探るムードが広がった。7月は金属取引全体のオフシーズンにも入り、静かな市場となっている。
■APTは5月半ば水準に下落、関係者「8月いっぱい下げる」
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格は7月25日に仲値$332.5/MTU と、5月半ばの水準に下げた。6月7日から7月10日まで$347.5で推移したのが直近でのピークとなった。中国の鉱石価格が高騰した流れが波及し一時上昇したが、国際市場は比較的冷静だったこともあり、足元は沈静している。
今後について、タングステン取引を長年扱う中堅商社幹部は「超硬向け需要が引き続き弱く、価格が上がる要素は少ない。一方、6月に値上がりしすぎたことから価格が下がる要因はある。取引自体も静かで様子見気分も強いため、8月いっぱいはじりじりと下げ続けそうだ」との見方を示し、下値のめどを「$310-315程度」と予測した。
■鉱石価格は環境査察の影響消化
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt) ($/MTU)
6月までタングステン市場全体をけん引した中国の鉱石価格は7月26日に仲値RMB12万9000/mtに下げた。4月初旬以来の安値水準となる。5月23日のRMB15万6500/mtがピークとなった。
国際鉱石価格も中国価格に追随している。7月11日に仲値$252.5/MTUと、やはり4月以来の水準に下げた。6月20日まで付けた$262.5が直近でのピークとなった。
中国で5月初旬に本格的に始まった当局の環境査察は約1か月間の実施期間を経て6月中旬に終了した。査察に伴いタングステン鉱山の一部が一時操業を停止したと伝わり、供給ひっ迫懸念が強まった。このため、5月下旬から6月にかけて鉱石価格が高騰したが、それも一服した。
■オフシーズンで下押し圧力
他の形態も同じ流れをたどっている。酸化タングステン、タングステンバー、フェロタングステンは5月上旬以来、炭化タングステンは4月末以来の水準にそれぞれ逆戻りした。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
上海有色網(SMM)は7月12日のレポートで、川下企業の発注が消極的である中、「タングステン生産会社の一部は6月から受注価格の引き下げに踏み切り始めた」と伝え、別のレポートでは「7月からは市場全体がオフシーズン入りしている」とも報じた。
また、FerroAlloynetも7月26日の週刊レポートで「川下企業は、在庫が低水準にもかかわらず買いだめの意欲もなく、全体にオフシーズン入りしている」と伝えた。
(IR Universe Kure)
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