マンガン鉱石価格が9ドル乗せ 豪州産7年半ぶり高値、サイクロンの影響長引く
マンガン鉱石の国際価格が急騰している。豪州産のマンガン鉱石価格は7月31日に高値$9.01/MTUと心理的節目の$9を上回った。2017年1月以来およそ7年半ぶりの高値水準。同国の資源大手サウス32が手掛ける西オーストラリアのマンガン鉱山が4月に熱帯低気圧(サイクロン)による被害で操業を停止。その後も再開のめどがなかなか立たず、供給懸念が長引いている。
■サウス32、埠頭再開を当初予定より延期
関連記事: マンガン鉱石供給不安でシリコマンガン、つれてフェロシリコンも急騰 | MIRU (iru-miru.com)
過去10年間の豪州産マンガン鉱石価格の推移(Mn44%min Mn1%あたり$)($/MTU)
サウス32が7月22日に発表した2024年6月期通期の事業報告書によると、被害を受けた埠頭の使用再開が2025年7-9月期になる見通しで、当初伝わっていた2025年1-3月期から遅れるもようだ。採掘活動自体の再開日程は示していない。
サウス32は、豪州のカーペンタリア湾に浮かぶグルート・アイランド島にある露天掘りマンガン鉱山「グルート・アイランド・マイニング・カンパニー」(GEMCO)の権益6割を保有する。しかし、この鉱山は2024年3月に上陸したサイクロン「ミーガン」によって、港湾施設をはじめとするインフラが壊滅的な打撃を受けた。これにより、同社の2024年6月期の豪州のマンガン生産量は前の期比34%減、販売量は21%減と大幅減。同期は、南アフリカなど他地域を含めたマンガン鉱石全体の生産量も20%減った。同社は8月末に通期決算を発表する。
サウス32事業報告書(英語):quarterly-report-june-2024-0xe265265507ed180b.pdf (south32.net)
■需要振るわずシリコマンガンやフェロマンガンは下落
原材料価格が高騰しているにもかかわらず、加工品のシリコマンガン価格は下落している。国際価格は7月31日にUS/860/tonと4月末以来の安値を付けた。中国価格も同調した動きだ。
過去3か月間のシリコマンガン価格の推移
さらに、フェロマンガン価格も同調して下落している。特に高品質の国際価格の下落がきつい。上海有色網(SMM)の7月半ばのレポートによると、中国景気全体の低迷から電池向けなどの需要が想定ほどは伸びず、6月は様子見気分が強かった。7月は金属取引全体がオフシーズンに入り、取引は静かになりがちという。
過去3か月間の高品質フェロマンガン価格の推移
中国国内の製鉄所などはマンガン鉱石の在庫が一定程度あるとはみられるものの、個々の企業の経営環境は厳しさを増しつつある。FerroAlloynetは7月17日付のレポートで、「多くのフェロマンガン企業が高コストと低需要に苦しんでいる」と伝えた。
(IR Universe Kure)
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