世界最大のISP亜鉛製錬所@ふぇらむ:鉄鋼協会
一般社団法人日本鉄鋼協会の会報誌“ふぇらむ”Vol.29/No.9/2024 のテクノスコープでは、“世界最大のISP亜鉛製錬所を訪ねて”と題して、鉄鋼製品の製造に多く使用される重要な材料のひとつである“亜鉛”の八戸製錬所における製造技術及び最近の動向を紹介した。
八戸製錬所の亜鉛生産能力は世界最大の11万2千トン/年。三井金属鉱業(株)、日曹金属化学(株)の2社による委託製錬所として操業している。
以前は“ふぇらむ”はオープンとなっておらず、閲覧するには会員登録が必要であったが、鉄鋼協会はTechno Scopeを会員以外にオープンにしている
詳細は下記よりご覧ください。
世界最大のISP亜鉛製錬所を訪ねて (isij.or.jp)
本文は、
<日本唯一の蒸留亜鉛の生産拠点>
<特徴ある製造工程>
<ISP法のすぐれた特徴>
<資源リサイクルのネットワークを構築>
<カーボンニュートラルの実現に向けて>
で構成されている。
概要を紹介する。
<日本唯一の蒸留亜鉛の生産拠点>
八戸製錬(株)八戸製錬所は、1968年(昭和43年)、八戸で亜鉛を生産するための操業を開始。ここで生産される亜鉛製品は、蒸留亜鉛(PW: Prime Western、純度98.5 %以上)、
精留亜鉛(SHG: Special High Grade、純度99.995 %以上)の2種類。
亜鉛の他、粗鉛、カドミウム、スラグ、硫酸、石膏の生産も行っている。
八戸製錬所の最大の特徴は、亜鉛精錬に「ISP (Imperial Smelting Process)法」を採用していることである。熔鉱炉を使って亜鉛と鉛を同時に生産する。
具体的には、亜鉛精鉱を焙焼・凝結して焼結鉱を造り、この焼結鉱をコークスと混合加熱して、亜鉛分を還元・気化させる。気化した亜鉛を鉛に吸収させ、その後亜鉛を分離・回収する。
<特徴ある製造工程>
製造工程は、1.焼結工程、2.熔錬工程、3.製錬工程からなる。
- 焼結工程:原料の構成は、亜鉛・鉛精鉱が約50 %、リサイクル原料が約45 %、産業外気物が5 %である。焼結工程から硫酸が得られる。
- 熔錬工程:熔鉱炉で亜鉛と鉛を同時に製錬する工程。熔鉱炉から排出された溶融スラグは、酸化亜鉛を分離後、セメント材料として再利用される。
- 精製工程:蒸留塔にて沸点の差を利用して鉛とカドミウムを分離して、精留亜鉛を得る。
<ISP法のすぐれた特徴>
- 亜鉛と鉛を同時に製錬できる。
- 原料に様々な精鉱、リサイクル原料、産業廃棄物などを使用することができる。
- 原料中の不純物に強い⇒電解法では、フッ素や塩素が多く含まれた原料を扱うのが難しいが、ISP法では対応可能。ばいじん、鉛含有塗膜くず、鉛ガラスなども受け入れている。
- 原料中の有を有利に回収できる。⇒リサイクル原料や産業廃棄物に含まれる、金、銀、銅、ビスマス、アンチモン、スズなどは、粗鉛や銅ドロスとして回収し、地金化できる。
参考情報
三井金属グループでは、Zn(亜鉛)乾式・湿式製錬のみならず、Pb(鉛)、Cu(銅)・貴金属製錬プロセスを有していて、これら製錬所の特徴を生かしながら高い元素採取率を達成している。
このなかで、八戸製錬は高不純物の硫化鉱・リサイクル原料からZn, Pb, Cu, 貴金属を回収できるプロセルとして活躍している。
三井金属グループの製錬ネットワークへ高まる期待 | パーパス活動レポート | パーパススペシャルサイト|三井金属鉱業株式会社 (mitsui-kinzoku.com)
(IRUNIVERSE tetsukoFY)
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