チタン原料市場市況2024年9月 じり安、中国の金属チタンが最安値圏 需要戻らず
2024年9月のチタン原料市場はさえない展開となっている。中国景気の低迷が続き、中国の一般向けスポンジチタン価格が下げ止まらない。他のチタン製品も最終需要の弱さが意識され、全体にじり安となっている。
スポンジチタン
過去3か月間の一般産業向けスポンジチタン価格の推移( China)($/kg)
中国の一般産業向けスポンジチタンは9月12日に仲値$6.46/kgまで下げた。毎週のように下落し、2016年1月に付けた$6.465を下回って統計が取れる過去20年間で最安値圏に下げている。
足元では中国の景気指標の悪化が続く。8月は工業生産高など製造業の不振も際立った。
関連記事: 中国経済、一段と失速 1-8月 製造業の苦境浮き彫り、若年失業率は悪化継続か・指標一覧 | MIRU (iru-miru.com)
金属チタンは2022年に兵器向け需要が注目されたが、メッキがはがれた格好だ。中国の上海有色網(SMM)は8月のレポートで、「これまでの需要不足でスポンジチタンの在庫が積みあがっている」と指摘していた。在庫消化がなかなか進まず、価格の下押し圧力は強い。
航空機向けスポンジチタンは2023年1月から横ばい。
過去3年間の航空機向けスポンジチタン価格の推移($/kg)
チタン精鉱
過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)
チタン鉱石価格は9月12日に仲値$386.5/tonを付けた。直近では8月29日に$388.5に上げたが続かず、8月初旬の水準に逆戻りした。中長期に見ると3月末の$401を直近高値に段階的に値下がりし、6月以降は節目の$386を挟む水準で一進一退の値動きとなっている。
Ferroalloynetの9月12日の報道によると、最終製品の需要が弱いことから、チタン精鉱の国際市場ではナイジェリアやブラジル、エジプトなどの非主流国から価格安めの製品を調達しようとする動きが活発になっている。これらの国で生産されるチタン鉱石はかつては品質にばらつきがあったが、徐々に改善されているもようだ。対して、従来からの主流国輸出であるモザンビークなどは既存顧客との安定した取引を中心に手掛け、価格は動きにくいという。
ルチルは2023年4月から値動きなし。
過去3か月間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)(us/ton)
二酸化チタン
過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)
チタン原材料全体の9割近くを占める塗料向けの二酸化チタンは動きが鈍い。8月22日に仲値$2170/tonに下げ、持ち直せていない。水準としては2023年12月下旬以来の安値で、7月初旬にもこの水準で長く横ばいだった。7月下旬に一時、$2190を付けたのが直近高値だが、勢いは続かなかった。
チタンスラグ
2024年に入り長く膠着状態が続いた結果、中国の一部の生産者は根負けし、小幅に価格を引き下げた。ただ、高チタンスラグは入札前で、関係者は様子見を決め込んでいる。最終製品の需要が弱いため、どうしても積極的なムードにはなりにくい。
四塩化チタン
過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)
四塩化チタンもじり安基調。9月12日に仲値RMB6125/mtと2020年10月以来の安値に下げた。
FerroAlloyNetは、「最終製品の需要が改善せず、メーカーの一部は新規注文を対象に値下げに踏み切り始めている」と指摘。ただ、踏み切れない企業も多く、「取引全体は混とんとしている」という。
フェロチタン
過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)
7月25日から$7.50/kgで横ばい。鉄鋼価格の低迷を受けて製鉄所が減産を試みる中で、フェロチタンを含む鉄鋼原材料の調達意欲は減退している。
<Topics>
●ロシア、チタン輸出制限を検討 プーチン氏が指示
ロシアのプーチン大統領は9月11日、閣僚とのオンライン会議で、西側諸国による経済制裁への対抗処置として、ウラン、チタン、ニッケルの輸出制限を検討するよう指示した。日本を含め多くのメディアが同日伝えた。
ロイター通信の同日報道によれば、ロシアはスポンジチタンの生産で世界3位。フランスや中国、ドイツがロシア産チタンを多く輸入している。米国はボーイングがロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もなくロシア産チタンの使用を停止したが、国全体ではなお少量を輸入している。
●大阪チタニウム、スポンジチタンの生産能力を25%増強へ 27年から
大阪チタニウムテクノロジーズは9月2日の取締役会で、「スポンジチタンの生産能力を25%増やす」と決定した。約330億円を投じて本社尼崎工場の製造設備を増強し、2027年度末までに年産能力を現在の4万トンから5万トンへと引き上げる。
関連記事:大阪チタニウム:スポンジチタン生産能力増強計画を決議 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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