米国の対中関税引き上げ、やはり選挙戦の材料に 27日からEV100%、重要鉱物25%
米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は9月16日、バイデン大統領が中国からの多くの製品を対象に輸入関税を9月27日から引き上げることを巡り、「戦略的産業の保護につながる」と評価した。ロイター通信が同日伝えた。トランプ氏はより広範な課税を打ち出している。対中関税も、結局はUSスチールの買収案と同じく選挙戦の材料になっている面がある。
■対中関税、バイデン政権の措置は「妥当」 NECトップ
ロイターによれば、ブレイナード委員長はニューヨークでの外交問題評議会のイベントで、バイデン現政権の輸入関税について「わずか5つ前後の分野での対中関税引き上げで、いずれも中国が自国企業に多額の補助金を拠出し、知的財産窃盗を多数行い、世界の供給網を支配している分野を対象にしたものだ」と強調した。
対して、トランプ氏が掲げる「世界各国からの輸入品に10%、中国からの全輸入品に60%」の関税は、国の税収は潤うものの、米国民は結果的に高い輸入品購入を強いられることになると指摘したという。
■鉄鋼、アルミ、EV電池も25%課税
米通商代表部(USTR)は9月13日、ホームページ上で、中国からの輸入品の多くについて9月27日から引き上げるとの最終決定を発表した。8月1日からの実施としていたが延期した。
電気自動車(EV)には現行の4倍の100%、現在非課税の重要鉱物に25%を課す。鉄鋼・アルミ製品は25%(現行は0〜7.5%)に、EV向けバッテリーも同じく25%(同7.5%)に上げる。一方、電動二輪車と電動自転車は除外。港湾用クレーンなどの一部品目については、猶予措置を盛り込んだ。
中国商務省はこの件に関し、9月14日に「強烈な不満と断固とした反対」とする声明を発表。報復措置を示唆した。
プレスリリース:商务部新闻发言人就美发布提高部分对华301关税最终措施发表谈话 (mofcom.gov.cn)
■選挙で対外問題は国内問題に
日米間では、周知のとおり日本製鉄によるUSスチールの買収案が選挙戦の材料となって難航している。買収反対は超党派の意思ではあるが、どこまで強く打ち出せるかの競り合いの様相を帯びる。
対中関税も様相は似る。中国製品への輸入関税引き上げは米国だけでなく欧州やカナダ、トルコなども実施する世界的な流れではあるが、どこまで強く、効果的な打ち出し方をするかで選挙戦の具になっている面がある。USスチールの件が愛国心に訴える面が強いのに対し、対中関税は中国の廉価品で実際に不利益を被る産業が多いという差はあるが、構造は似ている。
選挙戦の具である以上、少なくとも日本や中国がどういう反応をしようと実のところは蚊帳の外だ。訴えの対象は米国の有権者で、米政府が見ているのは海外ではない。対外問題は国内問題にすり替わっている。
米大統領選まで残り2ヵ月。「実は内向き」傾向は、少なくとも選挙の終了までは強まる可能性が高い。
関連記事:防衛強める米国 USスチール買収を大統領が阻止か、金属価格低迷が背景に | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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