生産能力増強と値上げで事業成長へ―大阪チタ・井田執行役員インタビュー

オンラインでインタビューに応じてくれた井田執行役員
日本で初めてスポンジチタン製造の工業化に成功し、スポンジチタン界のパイオニアとして業界をけん引する大阪チタニウムテクノロジーズ。9月2日には年間1万トン増のスポンジチタン生産能力増強計画を発表するなど、その動向に国内外の関係者からの関心が集まっている。同社の経営企画を担う井田義和執行役員に第1四半期の振り返りや足元の状況、今後の経営戦略について話を聞いた。
――2025年3月期 第1四半期(4~6月)の振り返りを
まず、チタン事業については、おおむね計画通りの販売・生産状況で推移、為替水準も円安で推移した事により、業績を確保。また、高機能材料事業においても半導体製造装置向けスパッタリングターゲット用素材である高純度チタンビレットのスポット発注があったことより、黒字を計上することができた。
――第2四半期に入り、足元の状況は
全体としては販売・生産ともに概ね計画に沿って進捗している。チタン事業は、国内向けは年度契約、輸出向けは年間契約で数量・価格が決まっている。ただ、第四四半期の輸出向け販売計画は現時点では不透明である。
高機能材料事業では、半導体需要が3Qには回復と見込んでいたが、関係者からの情報や半導体関連製品の生産・販売状況を考慮すると、その回復時期が遅れる可能性もあると見ている。
――主軸のチタン事業で注力していく取り組みは
当社が生産しているスポンジチタンの約7割が輸出で主に航空機向けとして取引されている。航空機市場は年率4~5%程度の伸長が予想されており、取引先も生産体制の増強に着手し当社にもスポンジチタンの安定供給を要請されている。それを受け、本社・尼崎工場の既存インフラを活かし、スポンジチタンの生産能力を増強することを意思決定した。我々としては、チタン事業の成長に向けて、生産能力の増強を可及的速やかに完遂することが足元の最重要課題だと認識している。今後は、設置スペースの確保や既存インフラとの連携に向けた準備を段階的に進め、2027年度末迄の完工を目指す。
このほか、生産効率化やコストダウンを目的としたAIやIoTの導入推進にも力を入れていく。また、直近の数年は二桁%の値上げを実施してきたが、コストインフレーションへの対応として、引き続き適正販売価格の追求を行っていく。生産・販売数量の増加も含め、チタン事業の成長・発展に繋げていきたい。
――ロシアや中国など他国のチタン産業動向が与える影響は
ロシアのウクライナに対する軍事侵攻により欧米の航空機サプライチェーンにおけるロシア製スポンジチタンへの依存度は減少傾向にある。ボーイング社やエアバス社もロシア製製品への依存度を弱める一方で、当社顧客との取引・新規契約を増やしている。そういった観点からロシア製チタンが航空機分野のサプライチェーンに復帰する可能性は極めて低いと思う。
安価な中国品の流入についても影響はほとんどないと見込んでいる。高品質が求められる航空機分野においては中国品参入の余地は乏しいと考えている。
――中期経営で注力すべき課題の中にはサステナビリティへの取り組みも含まれている
スポンジチタン製造においてはかなりの電力を消費しているが、使用量削減に向けた努力に加え、太陽光パネルの設置やグリーン電力の購入などできる限りの取り組みを実施している。また、我々の供給するスポンジチタンは航空機分野等での軽量化や燃費向上に貢献していると考えており、良質な製品を供給し続けることもサステナビリティの一環であると捉えている。
(参考記事)
(IRuniverse K.Kuribara)
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