サムコ(6387)24/7期WEB決算説明会メモ ニュートラルからややポジティブへ
24/7期4.8%増収8.5%営利増で連続最高収益更新、25/7期上振れで収益更新期待
株価(9/25):3410円、 時価総額274億円、 発行済株数8042千株
PER(25/7期DO予)17.9X PBR(2.23X)配当DO予48円 配当利回り1.4%
・23/7期16.6%増収35.4%営利増、受注23.3%増で連続最高益更新
・24/7期は20.3%増収18.1%営利増で連続最高益更新予想も豊富な受注残で増額期待
・新中計経営計画で25/7期に売上高110億円、営利26億円目指す
・株価は会社予想増額期待、来期以降も最高益更新続く見通しも株価織込みで中立
24/7期4.8%増収8.5%営利増で売上未達も利益上振れ着地し連続最高収益更新
化合物半導体、高周波電子部品向けCVD、エッチング製造装置に強みを持つ半導体製造装置メーカー。オプトエレクトロニクス、電子部品・MEMS半導体向け売上で全体の70%弱を占める。
24/7期業績は売上高82.03億円(計画比2.97億円未達、4.8%増)、営業利益20.17億円(同0.27億円増額、8.5%増)、経常利益20.88億円(同0.78億円増額、8.4%増)、税引利益14.71億円(同1.01億円増額、7.7%増)と2期連続最高売上、4期連続最高益更新となった。また受注高は81.47億円(0.9%減)、受注残高53.61億円(1.1%減)と受注額で3年連続80億円超を獲得した。
装置別ではCVD装置が売上16.32億円(25.7%増)、受注18.34億円(41.7%増)に。同部門はナノレベルの膜厚制御性に優れたカバレッジ性を有するALD装置が好調。AlOxやSiO2などの酸化膜向けに加え、チッ窒化膜や重金属含有膜、導電性金属膜などに膜種が拡大したことで、蒸気圧の低い原料を用いた成膜や導電性材料の成膜に対するALD装置が求められ、新型ALD装置などが化合物半導体分野の半導体レーザや高周波デバイス向けの加工用途で伸長している。またCVD装置も制御性を高めて周波利用のプラズマCVD装置や、原料となる溶液を霧状にしてキャリアガスで反応室の試料上へ運び反応させるミストCVDも、大気圧プロセスであるため真空容器が不要で設備コストが比較的安価となり、次世代パワーデバイスとして注目を集める酸化ガリウムの成膜手法として引き合いが増加している。さらに生産と研究に利用できる最大3反応室搭載可能なマルチチャンバープラズマCVDなども投入、CVD、ALD装置はデモルームなどを設け拡販を推進したこともあり大幅な伸びに。
最大機種のエッチング装置も売上高46.71億円(18.0%増)、受注47.37億円(0.1%減)とCVD装置同様に化合物半導体分野の半導体レーザや高周波デバイス向けの加工用途、加えてパワーデバイス向け、シリコン半導体欠陥解析用途などで売上が増加した。また電子部品向けでは5G/IoTを支える化合物半導体、誘電体、金属を用いたデバイスへのフレキシビリティを備えた真空搬送プラットフォームを中心に最大3モジュールを接続可能な電子品生産用エッチング装置「クラスターH™」2号機を研究機関から受注(納入は25/7H2予定)するなど、受注は半導体生産の回復が遅れる中でも高水準を維持した。部品・メンテナンスは売上高12.93億円(25.7%減)、受注11.92億円(16.6%減)とコロナの反動減、稼働率低下などで減少、但し後半からは受注回復に。
前期から用途別売上について区分変更を実施したが、用途別では最大構成比を誇る化合物半導体分野が34.36億円(56.0%増)と、通信用半導体レーザ、高周波デバイス、LED向け等が伸張した。シリコン半導体分野は11.89億円(14.3%減)とシリコン半導体加工用途が一服し減収に。電子部品向けは6.40億円(41.1%減)とMEMSやコンデンサ向けなどが業界の低迷を受け大幅減に。その他が15.79億円(24.3%増)となっており、大学等の共用設備向けなどが好調に推移した。また目的別では生産用が28.21億円(12.3%減)、研究開発用40.88億円(42.3%増)、部品メンテ12.93億円(25.7%減)と、大学・研究機関への共用設備(オープンラボ)や先端分野のR&D向けに伸長した。一方、生産向けは半導体生産の回復が遅れ減収に。
地域別で日本が44.08億円(計画比4.03億円未達、14.3%減)となっているが、装置では増加、部品・メンテの減が影響し減収に。一方、海外は37.94億円(同1.05億円増額、17.3%増)と中国が19.36億円(52.6%増)とパワー系なども含め大幅な増加、北米も8.24億円(85.2%増)と大学などへの認知向上、円安などで大幅増に。
利益面では増収効果に加え円安寄与もあり総利益率が1.7ポイント改善し51.1%(計画比2.6ポイント上振れ)した。一方で、積極的な研究開発向けの設備投資増に伴う償却費、人件費増などで販管費比率が0.8ポイント上昇し26.5%となったものの、営業利益率は計画比1.2ポイント上回り24.6%まで高まった。
25/7期半導体回復遅れで中計計画減額も15.8%増収10.1%営利増予想と連続最高益予想
25/7期会社予想は売上高95億円(中計計画比15億円減額、15.8%増)、売上総利益46.10億円(9.9%増)、営利22.20億円(同3.80億円減額、10.1%増)、経常利益22.40億円(同3.70億円減額、7.2%増)、税引利益15.30億円(同2.10億円減額、3.9%増)予想とした。すべての数字で過去最高を更新する予想となっているが、中計計画に対しては半導体生産の回復の遅れ、地政学的な面で中国向け構成比の抑制方針、クラスターツールなどの実用機の受注動向などを踏まえ、量産向けの伸びが中国向け、電子部品向けなどで不確実性があるなどで、中計達成が1年遅れる見通しとした。
セグメント別予想の開示はないが、分野別では引き続き化合物半導体分野、データセンタ―向けに光通信関連、炉油脂コンピュータ向けではシリコンフォトニクス関連など、25/7期受注で100億円超えを目指し、収益拡大を見込む。
利益面では採算面で量産効果の寄与が高い生産用の構成比が高まらないこと、資材高が継続しており、8/1よりコスト増に対応して平均10%程度の価格改定を行うものの、効果は来期にずれるとみられ、円安の一巡などもあり総利益率を2.6ポイント悪化する前提となっている。販管費では第3研究棟が12月に完成予定で25年5月に稼働予定から償却費増、人件費増など、今期も販管費増が見込んでいる。但し、為替面では急速な円高は考えにくく、売上面で中国向けについても影響は限定的とみられ、会社計画を上回る収益が期待される。
26/7期は1年遅れで中計達成を見込むも先端半導体需要拡大から中計上回る収益期待
現状、経済産業省が2024年6月に出した半導体・デジタル産業戦略検討会議の「半導体デジタル戦略」の中で、日本列島をパワー半導体の世界拠点にすべくパワー半導体強化を表明。国内ではウエハ製造拠点、素子製造拠点の設置が目白押し状況にある。
また世界的にも代表的なパワー半導体のSiC市場ではプロジェクトが急増、さらに国内ではGaNやGa2O3、ダイヤモンドなど化合物新材料半導体基板研究開発用を中心に新製品群の研究、実用化が急テンポで進みつつある。このほかAIデータセンタの巨大設備投資が実行される中で超高速大容量光通信設備に関連し、レーザデバイス、量子コンピュータでは量子デバイスのニーズも高まるなど、同社の得意分野の高成長が見込まれる。同社は従来、ラボ向けなど研究開発向けの事業を柱に量産向けの装置販売の比率が低かったが、ここにきて量産対応の製品投入も増加、非シリコン半導体の成長率が高いこともあり、25/7期には従来の中計目標に届かない状況にあるものの、26/7期には中計予想を上回る収益が期待され、その後も量産機対応などで収益拡大が続こう。
同社株価はパワー半導体の継続的な拡大で収益好調から上昇も、12/11の24/7Q1発表で減収減益となり12/18に3835円まで下落、その後半導体製造装置銘柄の急騰とともに上昇、3/13発表の24/7Q2で増収増益も受注が同期比19%減となったことから下落した。6/7の24/7Q3発表でも累計受注が11.1%減と、6/17には3770円まで下落、その後一時戻ったものの市場波乱で8/5には3040円の年初来安値更新となり、9/11の24/7期本決算で25/7期予想が最高益更新ながら中計予想に達しないとして反発に乏しい展開となっている。現在、25/7期会社予想EPS190.48円に対しPER17.9倍は、プライム機械平均PER16.4倍に対し多少割高な水準にあり、パワー半導体ワイヤーソーのタカトリのPER8.7倍に対し割高、貼合・剥離装置のタツモ16.2倍と比較しても若干割高な水準にある。但し四半期受注推移では24/7Q4で同期比34.5%増と急回復しており、会社側でも25/7期は100億円超えを見込んでいる点で、26/7期には1年遅れるものの中計予想を上回ってくるとみられ、予想PERも13倍程度まで下がるとみられる。このため、化合物半導体関連銘柄の代表として、また光デバイスではAIデータセンタ向けデバイス関連でもあり、改めて注目度が高まるとみられる。このため従来のニュートラルからややポジティブに評価を見直したい。
*化合物半導体関連装置で強いといわれるタカトリ(6338)、タツモ(6266)との比較
(H.Mirai)
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