「中国はライバル排除のため意図的にリチウム供給増」米高官発言 コバルトも?
ロイター通信は10月8日、米国務省のホセ・フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官が足元のリチウム価格の下落について「中国がライバル排除のために意図的な供給過剰を引き起こしている」との見方を示したと伝えた。同氏は5月にコバルトについても中国企業による供給過剰を指摘。米国の対中警戒感は強い。
■米IRAへの対抗でリチウム価格引き下げ?
報道によれば、フェルナンデス氏は訪問先のリスボンで10月7日に発言した。ポルトガルは隣国のスペインとともにリチウム埋蔵量が豊富だが、足元のリチウム価格の下落に伴い経営難や資金不足による採掘プロジェクトの遅延に陥っている企業が多い。フェルナンデス氏はポルトガル企業の苦境に対し、「私たちは彼らを助けたいと思っています。そして、私たちにできると考えています」と話したという。
同氏は同時に、中国について「今日、世界が必要とするよりもはるかに多くのリチウム」を生産していると指摘。これは米国が2022年から実施しているインフレ抑制法(IRA)に対する「中華人民共和国の意図的な対応」だと述べ、「彼らは略奪的な価格設定に従事しています...(彼らは)競争がなくなるまで価格を下げます。それが起こっているのです」と話したとも伝わった。
リチウム価格は低迷が続く。ベンチマークである炭酸リチウム価格は10月10日に仲値RMB7万5500/mtを付けた。直近のピークだった2022年11月のRMB60万近くから8分の1程度に値下がりした。世界のリチウム企業は多くが採掘停止などの措置に追い込まれ、9月にオーストラリアの鉱山の操業停止を決めた米豪アルカディウム・リチウムは、10月9日に英豪リオ・ティントへの身売りを発表した。
過去5年間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% china)(RMB/mt)
■コバルト、24年はCMOCとグレンコアで生産の差が2倍近くに
同様の構図はコバルトでも見られる。コバルトは中国の洛陽モリブデン業集団(CMOC )が2023年にコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)の鉱山での生産を再開したことで供給量が急増し、価格は急落。ベンチマークであるLGコバルトは10月10日に仲値$10.9/LBと、2022年5月の直近ピークに比べやはり4分の1近くの安値圏にある。
過去5年間のLGコバルト 価格の推移(Co99.3%)($/LB)
5月15日の米ブルームバーグ通信は、やはりフェルナンデス氏が同通信のインタビューに対して「コバルトの場合、CMOCという会社が供給過剰を助長し、価格を抑えている」と話し、CMOCの行いによって現在展開されているのは「略奪的な価格設定のバリエーションだ」と語ったと伝えていた。
関連記事:米国 コバルト過剰の原因は中国CMOCと指摘 | MIRU (iru-miru.com)
CMOCの供給急増が意図的なライバル排除を目指したものかは、現時点では不明だ。ただ、実際、CMOCは生産再開を受けて、2023年のコバルト生産量が5万5200トンとスイス資源大手グレンコアを上回り、世界首位に躍り出た。
2024年もこの状態は続く。CMOCが8月下旬に発表した2024年1-6月期のコバルト生産量は5万4000トンで、2024年通年では最大7万トンを見込む。対するグレンコアは7月末発表の2024年通年の最新ガイダンスで、コバルト生産目標を3万5000-4万トンとした。2024年通年の生産量には2倍近くの差が開く見通しとなっている。
(IR Universe Kure)
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