バナジウム市場近況2024#9 底堅い。中国景気対策による鉄鋼需要の改善期待が支え
2024年11月初めまでのバナジウム価格は底堅い。五酸化バナジウムが10月上旬、中国の景気対策に伴う鉄鋼市場の回復期待から一時急騰した。その後の価格は落ち着いているが、需要回復への期待が根強く、フェロバナジウムとともに高止まりしている。
■五酸化バナジウム一時5ドル台、フェロバナジウムも空気改善
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは10月24日に仲値$4.94/lbを付けた。中国の国慶節(建国記念日)連休明けの10月10日に$5.13と前日から13%も値上がりする場面があった。中国当局が連休直前の9月下旬から不動産テコ入れなどを含む景気対策を相次いで打ち出し、鉄鋼需要が回復すれば添加剤としてのバナジウム需要も回復するとの期待が強まった。
五酸化バナジウム価格は10月初旬に$4.555と直近安値で推移していた。FerroAlloy.netは10月18日のレポートで、価格急騰の背景として「これまでの価格低迷を受けて、バナジウムメーカーの一部は減産やメンテナンス、鉱石調達の抑制などに踏み切っていた」と指摘。供給を絞っていたため、にわかに拡大した需要拡大期待に対応できなかったとした。ただ、足元の需要が実際に回復しているわけではないため、10月下旬からは景気対策の効果への期待も一巡し、価格は落ち着いている。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムは五酸化バナジウムに比べ値動きは穏やかだが、やはり空気は改善している。10月24日に仲値$26.675/kgを付けた。7月半ば以来の高値水準。8月下旬の$25台前半を底に次第に値を上げ、緩やかな上昇を続けている。ただ、$30の壁は遠く、中長期の水準としては2021年1月以来の安値圏にある。
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10月24日
商船三井傘下のコーポレートベンチャーキャピタルMOL PLUS(MOLプラス)は自社ホームページ上で、「系列でシンガポールに拠点を置くMOLアジア・オセアニアと、シンガポールの電池スタートアップ企業VFlowTech(ブイフローテック)と3社で、アジア・太平洋地域で物流業界にバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)導入を進めるための覚書を締結した」と発表した。
関連記事: 週刊バッテリートピックス 「大阪万博向け水素燃料電池船が完成」「車載電池が不調」など | MIRU
10月11日
名古屋工業大学はホームページ上で、「鉄-バナジウム-アルミニウム(Fe₂VAl)熱電変換材料にチタン(Ti)を添加することで、材料内の原子をつなぐばねが軟化することを発見した」と発表した。熱電変換材料の低熱伝導率の拡大に活用が可能という。
プレスリリース:熱電変換材料を高性能化させる新たなメカニズムを発見 ~元素添加で材料内の原子をつなぐバネが軟らかに~|国立大学法人名古屋工業大学
(IR Universe Kure)
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