週刊バッテリートピックス 「大阪万博向け水素燃料電池船が完成」「車載電池が不調」など
2024年10月21日~10月27日のバッテリー業界では、水素やバナジウムレッドフロー電池(VRFB)など新型電池の話題が目立った。岩谷産業は大阪万博向けの水素燃料電池船を完成。商船三井系企業が港湾でのVRFB導入を目指しシンガポール企業との協業を発表した。一方、車載電池では、企業撤退や輸出減など不調を思わせる話題が多かった。
<国内>
●商船三井系、シンガポール企業とバナジウムレドックスフロー電池で協業
商船三井傘下のコーポレートベンチャーキャピタルMOL PLUS(MOLプラス)は10月24日、自社ホームページ上で、「系列でシンガポールに拠点を置くMOLアジア・オセアニアと、シンガポールの電池スタートアップ企業VFlowTech(ブイフローテック)と3社で、アジア・太平洋地域で物流業界にバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)導入を進めるための覚書を締結した」と発表した。VRFBを商船三井グループや取引先が所有する港湾施設やコールドチェーン倉庫へVRFBを導入し、脱炭素化を推進する。
プレスリリース:MOL PLUS・MOL (Asia Oceania)とVFlowTechがバナジウムレドックスフロー電池の港...
●岩谷産業、大阪万博用の水素燃料電池船が完成
水素燃料電池船「まほろば」
(出所:岩谷産業の特設ホームページ)
岩谷産業は10月24日、自社ホームページ上で、「水素燃料電池船『まほろば』の建造が完了した」と発表した。10月18日に大阪・中之島ゲートに到着した。
まほろばは、2025年4月に開幕する2025年大阪・関西万博で、「動く海上のパビリオン」として運航が計画されている。走行時に二酸化炭素(CO2)などを排出しないことが特徴で、今後実証運航を経て万博に臨む。
プレスリリース:水素燃料電池船「まほろば」が完成!~今後は旅客運航に向けた実証運航を実施~
●環境省、「電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準」公表
環境省は10月23日、バーゼル条約の附属書改正に合わせて手続きを進めていた改正省令を公布し、併せて対象廃棄物の判定基準を示す「電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準」を公表した。2025年1月1日から適用する。
関連記事:バーゼル条約附属書改正対応で改正省令公布――環境省 判定基準も公表 | MIRU
●3DC、リチウムイオン電池の高容量化で岐阜大准教授と契約
革新的カーボン新素材「Graphene MesoSponge®(GMS)」の開発・製造販売を行う3DC(宮城県仙台市、黒田 拓馬CEO)は10月22日、「シリコン系負極材料」の開発に向けて、岐阜大学の工学部機械工学科の西田哲准教授との共同研究契約を4月に締結したと発表した。リチウムイオン電池の高容量化・長寿命化の実現を目指す。
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●大阪ガス、EV向け蓄電池の劣化診断試験を開始
大阪ガスは10月21日、自社ホームページ上で、「エネルギー関連の研究を受託する完全子会社のKRI(本社:京都市)と共同で、EV向け蓄電池の劣化具合を診断する技術の実証試験を10月から始める」と発表した。グループ内の社用車を使って検証する。
プレスリリース:大阪ガス:EV蓄電池の劣化診断・寿命予測モデルの実証実験の開始について~EV市場の拡大・EVライフサイクルの長期化に向けて~
●JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024開催
自動車業界の展示会「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」が10月15-18日、幕張メッセ(千葉県幕張市)で開催された。IR Universe記者による報告は以下。
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<海外>
●中国車載電池SVOLT、欧州撤退か
中国車載電池の蜂巣能源科技(SVOLT)が欧州事業から撤退する模様だ。日本経済新聞が10月25日に関係者の話として伝えた。2025年1月までに欧州事業を担うドイツ・フランクフルトの拠点などを閉鎖する。人員削減も行うとみられている。SVOLTは中国民営自動車の長城汽車系の車載電池メーカー。
●バッテリーセル価格が過去最安値 英ベンチマーク・ミネラルズ
リチウムイオンバッテリーに特化した調査会社の英ベンチマーク・ミネラルズは10月25日、会員向けニュースレターで、「すべてのバッテリーセル価格が過去最安値を付けた」と報告した。原材料となる鉱物価格の値下がりが背景にある。
報告によると、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)価格は足元で1キロワット時(kwh)当たり60ドルに届かない価格で、三元系リチウム電池(NCM)に比べ14%ほど安い水準に落ち込んでいる。バッテリー業界の技術的進歩もLFP価格の下落に拍車をかけているという。
●中国、初の全固体リチウム電池の量産ラインが稼働
中国・北京市の対外経済開放区である北京経済技術開発区(北京亦庄)は10月25日、自社ホームページ上で、「区内に拠点を置く北京純リ新能源科技の全固体リチウム電池の生産ラインが正式に量産を開始した」と発表した。全固体リチウム電池の量産は中国初。
関連記事:中国初の全固体リチウム電池量産ラインが正式に稼働開始 | MIRU
プレスリリース:亦庄智造国内首条全固态锂电池量产线投产_工作动态_北京经济技术开发区
●米国、60年ぶりにリチウム鉱山認可 トヨタなどの車載電池材料向け
(出所:米内務省ホームページ)
米内務省は10月24日、ホームページ上で、「オーストラリアのリチウム大手アイオニアに対し、米ネバダ州ライオライトリッジ・リチウム鉱山開発計画を認可する」と発表した。
米自動車大手フォード・モーターやトヨタ自動車などに車載電池材料としてのリチウムを供給する。鉱山の開発は、環境問題を巡り地元住民らとの対立が続いていた。10月27日付の日本経済新聞によると、米国が自国内のリチウム鉱山の採掘を認可するのはおよそ60年ぶり。
●中国CATL、PHV向け新型電池を発表
車載電池世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は10月24日、自社ホームページ上で、プラグインハイブリッド車(PHV)向けの新型電池を発表した。航続距離は最長400キロメートルで、280キロメートル走行分の充電を10分で完了できる。
プレスリリース(中国語):宁德时代骁遥超级增混电池全面开启增混“大电量”时代
●韓国LG、米ナトリウムイオン電池企業に出資
米国の電池スタートアップ企業ユニグリッド・バッテリー(UNIGRID Battery、本社:米カリフォルニア州)は10月22日、PR Times、を通じ「韓国LGグループ傘下のLGテクノロジーベンチャーズから出資を受けた」と発表した。出資額は明かしていない。
ユニグリッドはカリフォルニア大学サンディエゴ校から発生したスタートアップ企業で、先進的なナトリウムイオン電池の開発を手がける。
プレスリリース:U.S. Sodium-Ion Battery Startup Receives Investment from LG Technology Ventures
●米、火力発電所の用途転換を後押し バッテリーセルなど生産へ
米エネルギー省は10月22日、ホームページ上で、「老朽化した火力発電施設について、バッテリーセル生産などのクリーンエネルギー用への用途転換に4億2800万ドル(約653億円)を拠出する」と発表した。
関連記事:米国、火力発電所の用途転換に653億円 LIB用セルなどクリーンエネルギー工場に新装 | MIRU
●中国、1-9月のリチウムイオン電池輸出額10.1%減
中国の車載電池業界団体である中国化学・物理電源業界協会が10月22日に発表した中国の1-9月のリチウムイオン電池輸出額は前年同期比10.1%減の436億8700万ドルだった。単月では9月の減少率は前年同月比9.9%減と、減少のピークだった3月の2割減から縮小した。
1-9月の輸出量は4.6%増の28億5300万個だった。輸出先のトップは米国。2位はドイツ、3位はベトナムで、日本は6位。
中国のリチウムイオン電池輸出の推移
(出所:中国化学・物理電源業界協会ホームページ)
プレスリリース:2024年1-9月我国锂离子电池出口额累计436.87亿美元|中国化学与物理电源行业协会
●独ベンツ、ブラックマス特化の車載電池リサイクル工場を開設
ドイツ自動車大手のメルセデス・ベンツは10月21日、自社ホームページ上で、「機械式湿式製錬プロセスを備え、ブラックマスに特化した車載バッテリーのリサイクル工場を、南独クッペンハイムに開設した」と発表した。自社内でバッテリーリサイクル工場までを完備する自動車メーカーは欧州初。
関連記事:独ベンツ、南ドイツにバッテリーリサイクル工場 ブラックマスに特化 | MIRU
(IR Universe Kure)
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