ジャパンモビリティショー、大手とスタートアップの競演

自動車業界の展示会「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」が15~18日にかけて幕張メッセで開催され、盛況のうちに幕を閉じた。同展示会には独自技術を持つスタートアップ企業145社と、大手自動車メーカーをはじめとした事業会社58社が出展。ビジネスマッチングの場として盛り上がりをみせた。
国内自動車業界で売上高トップのトヨタ自動車は、日本自動車工業会ブースで「液体水素エンジンGRカローラ」のレース参戦車両を展示したほか、カーボンニュートラル社会の実現に向けた「ポータブル水素カートリッジ」を日本初公開。水素エネルギーのポテンシャルを来場者に訴求した。
ポータブル水素カートリッジ
水素は使用時にCO2を排出しないクリーンエネルギーとして知られ、再生可能エネルギーを活用すれば製造工程においてもCO2の排出を抑えることができるとして、本格的な社会実装に向け、インフラやカートリッジの開発動向が注目されている。
「ポータブル水素カートリッジ」は、トヨタが燃料電池自動車(FCEV)開発で培った技術を活用し、これまで大型で持ち運びが困難だった水素タンクを、人の手で運ぶことができるサイズに小型・軽量化したもの。重量8.5kg、直径200×全長580㎜、容量3.3kwhで、専用の持ち運び用リュックバックも用意している。
リンナイの水素コンロ
水素を身近で安全なエネルギーとして様々な生活シーンで使用できる設計とした点も大きなポイントで、ポータブル水素カートリッジに充填した水素を燃料電池としてや、水素を燃焼させ調理用途に使用することができる。家電メーカーのリンナイと共同開発した「水素調理器(コンロ)」のデモンストレーションも行われた。
従来のFCEV向け水素インフラでは、水素製造拠点から大型の輸送車で水素ステーションまで水素を移送し、FCEVに積まれた水素タンクに水素を充填していたが、水素ステーションの数も限られており走行範囲も限定的だった。しかし、今回披露された「ポータブル水素カートリッジ」であれば、一般的な自動車販売店や小売店などでも保管・販売が可能なため、社会実装されれば、FCEVの走行範囲は劇的に拡大すると予想される。加えて、日常生活や非常時の燃料として活用できるのであれば、FCEVの購入時の心理的なハードルも大幅に下がることだろう。
また、同じく大手自動車メーカーのスズキも水素に関する展示を行い、水素燃料電池で走行する荷役運搬車などを紹介した。同車両はスズキの湖西工場で実施されている実証事業で使用されているもので、モータ出力2.3kw、けん引能力2トンの性能を誇る。
水素燃料電池で走行する荷役運搬車
燃料の水素は風力と太陽光発電を利用し製造されたもので、カーボンニュートラル推進の一手として実証が進められているという。なお、水素は荷役運搬車のほか、水素バナーや塗装工程でも活用されている。
一方、スタートアップコーナーでは、トヨタ自動車出身の谷中壯弘により設立されたLean Mobility(リーンモビリティ)の電動ミニカー「Lean3」が多くの来場者の関心を惹いた。
「Lean3」
同車両は独自の「アクティブ・リーン・システム」を搭載し、小型・軽量ながら高い安定性と快適な乗り心地を実現している。リン酸鉄リチウムイオン電池を使用しており、容量は8.1kwh、充電時間はAC100Vで約7時間の想定だ。フル充電走行距離は100㎞で、都市生活者のニーズに応える革新的なマイクロモビリティとして開発を進めている。
リーンモビリティは国内ヴィークル製造スタートアップとして最大の調達規模となる累計46億円の資金調達をおこなったと発表したばかり。愛知県豊田市との連携も開始しており、「Lean3」の量産化に向け着実なステップアップを重ねている。
(IRuniverse K.Kuribara)
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