樹脂・ガラス回収にインセンティブ導入へ、経済合理性の懸念も―自動車リサイクルWG

経産省提出資料より引用
経済産業省の産業構造審議会は14日、自動車リサイクルワーキンググループを開催し、資源回収インセンティブ制度のベースとなる「使用済自動車に係る資源回収インセンティブガイドライン」の最終取りまとめ案を発表した。経済的合理性を懸念する意見もあったが、参加委員から修正案はほぼなかったことから、原案を維持した形で正式に策定となる見込みだ。
資源回収インセンティブ制度は、解体業者や破砕業者が破砕残さ(ASR)になる前に樹脂やガラスを回収した場合、本来ASRになるはずの重量が減量されることから、その減量分に相当する再資源化費用(ASRリサイクル料金)を、資源を回収した事業者へ経済的インセンティブとして付与する制度のこと。自動車リサイクル法に基づき自動車所有者が預託するリサイクル料金の一部を原資とする計画だ。今年度から本格的な議論・検討が開始されており、2026年4月の制度開始に向け準備が進められている。
今回提出されたガイドライン最終案では、3月に公表された中間取りまとめ案を元にしつつ、資源回収を行うコンソーシアム(共同事業体)を結成する際の要件として、「国内を中心として資源循環を行う事業者に引き渡すこと」などを追記している。回収した廃プラチックを国内でペレット化することを具体的な条件とする考えだ。
日本自動車連盟の専務理事を務める野津真生委員は、リサイクル料金の増額や自動車販売価格の変動といった影響を懸念。「経済的合理性を失わないよう配慮する必要がある」と意見を述べた。
これに対し、経産省担当者は、既存の原資額で賄う予定であり「リサイクル料金は上がることはないと認識している」と回答した。ただ、別の委員からの回答の中で、「制度が普及した後は、インセンティブの対象を樹脂やガラス以外に拡大することも検討していきたい」という趣旨の発言をしており、将来的なリサイクル料金の増額の可能性は否定できない。
リサイクル料金はメーカーや輸入業者が費用の将来予測をして決定するもので、5000円強から2万円弱が目安となっているが、大幅な増額となれば、ドライバーの購入判断に影響することも少なくないと予想される。
今後のスケジュール(経産省提出資料より引用)
現在、ガイドラインの策定作業と並行して、経産局・環境事務所への周知や制度特設サイトでの広報活動、自動車リサイクルシステムにおける機能追加、コンソーシアム形成に係る実証事業が展開されている。解体業者や破砕業者、原材料メーカーによるコンソーシアム結成の受け付けは、早ければ2025年上旬にも開始される計画だ。
(IRuniverse K.Kuribara)
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