厦門ステンレス産業会議APAC2024(番外編5)Gunbuster Nickel Industryのタンデラ氏に聞く
11月4日、5日の厦門でのステンレス・ニッケル産業の国際会議で、インドネシアのガンバスター社のジャクリーヌ・タンデラ女史と会話する機会がありました。
Jacquiline Tandela C.T Sales Department Gunbuster Nickel Industry
(関連記事)厦門ステンレス産業会議APAC2024 アーカイブ
1.日本とのつながりを期待している
彼女はNPIの新たな輸出先を模索しており、日本への輸出の可能性を筆者に打診してきました。質問事項は以下の通りです。
(1)日本でNPIを使用する可能性があるステンレスメーカーはあるか?
(2)インドネシアからNPIを輸出する際の、関税、および非関税障壁について情報交換したい。
私(赤井)からは、以下の通り回答しました。
(1)現在、日本のステンレスメーカーは、基本的にスクラップとFeNiを使用し、 NPIを使用する会社は無いと考える。
(2)NPIの輸入について
NPIの関税障壁、非関税障壁については専門外で分からないが、来年2月18日に開かれるバッテリーサミットに参加すれば、多くの情報が入り、関係者とも接触できると考える。
2.Gubuster Nickel Industryについて
Perusahaan Industri Smelter Nikel Morowali Indonesia - PT GNI
(1) 同社は、2019年創立の新しい会社で、NPI製造専門の会社。
(2) 生産能力は、年間1.9百万トン。
(3) 特徴的なのは、精錬設備に電磁誘導加熱型のロータリーキルン(RKEF)を使用していること。
※ロータリーキルンでも、化石燃料を燃焼する方式ではなく、誘導加熱で加熱する方式。電気加熱であるため、CO2発生は少ない。
※日本でも軽焼ドロマイトの焼成にRKEFを使用しており、吉澤石灰工業などが使用している。
問題は電力に、低炭素型のグリーン電力を使用できるかどうかです。これはインドネシアのNPIメーカー共通の課題であり、低炭素ステンレススチールを実現するための鍵となる問題です。
3.グリーン電力とRKEFについて
(1) 現在、ステンレスメーカーは、ステンレススクラップを多用する企業とNPIとFeNiを使用する企業に分かれ、CO2発生については前者が優るとされています。
(2) NPIメーカーは、低炭素化で遅れを取らないために、グリーン電力の活用を目指しますが、今回の厦門の会議で、その具体的方法についての言及はありませんでした。低炭素化の技術を確立するために人材育成から始めるという段階です。
私見ですが、原子力発電や、風力発電、太陽光発電等の再生可能エネルギーに頼ったNPI製造は難しいと考えます。
インドネシアの場合、地熱発電やバイオマス火力発電の活用が現実的です。
(3) RKEF自体は、前述の通り日本でもなじみのある設備であり、グリーン電力を用いてRKEFを用いたNPIであれば、日本でも受け入れられる可能性があります。
(4) 主にスクラップを用いる電気炉操業に於いても、銑鉄は重宝されます。
温度補償用に、銑鉄を装入して酸素を吹くというのは、簡便かつ安価な昇温方法であり、これはステンレス製造時のNPIでも同様です。
今後、ステンレススクラップ価格が変動する中で、安価なNPIに魅力を感じるステンレスメーカーは出現すると予想されます。主要原料はスクラップとしても、副原料としての活用の可能性はあります。
そこにGunbuster社が売り込む機会はあると思われます。但し、あくまでグリーン電力使用が前提です。
(IRUNIVERSE Akai)
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