林地残材の活用促進でバイオマス発電の事業継続を―経産省小委員会

経済産業省は11月28日、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会で、2040年に向けたバイオマス発電導入の方向性案を発表した。▽国産木質バイオマス燃料の供給拡大▽燃料の安定調達や持続可能性の確保▽地域の農林業等との連携――の3項目が主な方針として示されたほか、委員からはFIT/FIP期間終了後の事業継続を促すため、炭素賦課金制度の適正な運用が求められた。
バイオマス発電は、災害時のレジリエンス向上や地域産業の活性化を通じた経済・雇用への波及効果が大きいなど、地域分散型、地産地消型のエネルギー源として多様な価値を有するエネルギー源として注目を集めている。経産省がこのほど公表した2023年度エネルギー需給実績によれば、バイオマス電力の発電電力は前年比7.8%増の401億kWhで、再生可能エネルギーの中では、太陽光、水力に次ぐ第3位の発電量を誇る。さらに言えば、前年比の伸び率でみると、太陽光(4.2%増)と水力(2.4%減)を上回っており、今後の政策動向が注目されるところだ。導入量でも24年3月末時点で7.5GWとなっており、既に2030年目標(8.0GW)に近い水準に達している
経産省提出資料より引用
一方で、発電コストの大半を収集・運搬等の燃料費が占める構造にあることに加え、近頃は燃料需給の逼迫も見られる。また、大規模なバイオマス発電については、安定的かつ持続可能な燃料調達の確保や、コスト構造を踏まえた将来的な自立化が課題となっている。
その解決策として経産省が提案した取り組みが、▽国産木質バイオマス燃料の供給拡大▽燃料の安定調達や持続可能性の確保▽地域の農林業等との連携――の3つである。
国産木質バイオマスのうち、製材工場等残材と建設発生木材は製紙原料などの用途でほぼ利用済みとなるため、経産省では、林地残材などの更なる利用に向けた体制構築、各地域に適した早生樹や広葉樹等の育林手法の実証、適正な再造林の展開などを推進する考えだ。
また、環境、社会・労働、ガバナンス、食料との競合、ライフサイクル温室効果ガスの排出量などの観点から持続可能性が確保されたバイオマス燃料の利用を引き続き求めていくとともに、農林漁業の健全な発展と調和を図りつつ、家畜排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物の有効利用を進めることを提案した。
これまでの会合の議論では、FIT/FIP期間の終了後に、バイオマス発電事業が継続されるかを懸念する声が多く上がっており、これを払拭するための具体的な政策の立案が求められているといえる。
28日の会合でも、バイオマス発電から石炭由来の火力発電に移行してしまう事態を避けるために、「炭素賦課金などの制度により適切な炭素価格が設定されることが重要」(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、村上千里委員)といった意見があがった。
炭素賦課金制度は温室効果ガス排出に対して金銭的なコストを課すもの。国内では、化石燃料を輸入する企業に対し、2028年度から炭素賦課金の支払いを義務付ける方針を決定している。
(IRuniverse K.Kuribara)
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