SUSscrap MarketWatch 2025#1 下げの寒冷前線発達中

2025年、年明けの国内ステンレススクラップ市況は、昨年末時点でも予想されたように「下落」で始まった。今週9日にJSPが304系スクラップの5円下げをアナウンス。輸出大手の親和スチールも5円下げ。
そして中部地区の特殊鋼メーカー2社も5円下げをアナウンス。これはLMEニッケル相場の値下がりによるものが大きいが、ステンレスメーカーの減産、輸出向け先国メーカーでの減産、旧正月休み、と複合的に下げ要因が重なっている。
LMEニッケル相場は一時トン当たり15,000ドルを割り込んだが、現地9日では再浮上。しかし地合いの弱さは変わらない。
(LMEニッケル相場の推移 $/ton)
304系スクラップ価格も下図のように下落。
メーカー買値で190~195円、韓国向け輸出では185~190円が実勢とみられる。
アジア向けSabotはトン当たり1270~1300ドルで推移中。
(国内304スクラップ相場の推移 ¥/kg)
(為替円ドル相場の推移TTS)
国内のステンレスミルは昨年から「低空飛行」でローレベルの生産が続いているが、昨年12月から日鉄ステンレスが304系を中心に減産に入っており、現状、ステンレススクラップ需要は乏しい。もっと言えば「欲しくない」。
昨年は日鉄およびJSPがマーケットをけん引してきた経緯があるため、この大黒柱の減産は国内のステンレススクラップ市場に少なからぬ影響を及ぼすと思われる。
また、輸出面においても韓国ポスコ社が通常のメンテナンスとは別に2月~3月にかけて冷延設備の更新を行うこともあり、これまた「欲しくない」ポジション。
従って、ポスコ向けを中心としていたヤードディーラーは急いで売り先を国内の他の輸出シッパー(親和スチールなど)に変えている様子。
ステンレススクラップの発生は依然として少ない。しかし需要も昨年と異なり落ちている。
昨年とはここが違う。需要があったからこそスクラップ評価も高かった訳だが、今の客観情勢からするとしばし304系スクラップ市場の地合いは弱いと言わざる得ない。
中国系も旧正月休み明けの2月上旬頃までは動きがない。
輸出のコンテナも不足気味。日本の港湾が1週間以上休んでいたこともあり、到着が遅れている模様。
「なにか政治的な発言でもないかぎり相場の浮上はないでしょう。1月20日のトランプさんの就任、3月の中国全人代あたり。。」
しかし、現時点では浮揚期待は低い。
400系(Cr系)もステンレス特殊鋼ミル、輸出シッパーも軒並みキロ当たり2~3円の値下げ。
市中実勢では港でキロ当たり70円前後。韓国SEAH向けではCIF76円前後とみられる。インド向けがあるが、フレートが高いため70円以上の買いは厳しいと目される。
インド(ナバシェバ)向けのコンテナフレートは20Ftで2590ドル前後、40Ftで3900ドル前後と依然として高止まりしている。
(400系スクラップ相場(¥/kg)とインド向けコンテナフレート価格の推移)
(IRUNIVERSE YT)
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