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東京オートサロン2025 自動車のニーズから見えてくる市場の色の違い

2025年1月10日から12日までの3日間、千葉県千葉市の展示場である幕張メッセにおいて東京オートサロン事務局(TASA)主催の「東京オートサロン2025」が開催された。本記事では会場内の概況やそこで伺った話などをもとに、現在話題となっている電気自動車の動向や大型車の海外需要といった内容を記載していく。
 



 

EV普及の急先鋒となるアジア圏

 

今回の東京オートサロンにおいて、異彩を放つブースが2つ存在する。電気自動車を専門に扱う中国のBYDと、ラインナップがほぼEV一色となった韓国の現代自動車である。両者ともに電気自動車に対して強いアプローチを掛けている事もあって、比較的ガソリン車やHV車両が多い同イベントでは変わり種といっても過言ではない。

 

 

 BYDはこれまで日本において三車種を投入してきたが、今回新たに四車種目となる「SEALION 7」の投入を発表。2025年2月に販売予定となっているこの車両は、現在同社が展開しているセダンタイプの車両「SEAL」を更にアップグレード、かつSUV仕様で利用したいというユーザー向けのものとなる。価格はなんと550万円前後とこの手のBEVとしては珍しい600万円未満に抑え込んでおり、それでいて同社の電動SUV「Atto 3」とは全く段違いのグレードで内装を仕上げているという点が棲み分けの大きな特徴となっている。もちろん会場内には同社の「DOLPHIN」も展示。それぞれの価格帯の車両が均等に人気を分ける中で、新たな柱として投入されるSEALION 7の使い勝手にユーザーからの注目が集まっているという状況だ。また、同社は車両設計を行う際に構築している電気自動車の製造土台として「e-Platform3.0」を展示。自社で生産している車両全てに適用されるパッケージを公開するという大胆な戦略で、参加者の興味を大いに引いていた。

 

 

現代自動車は同社の新モデルである「INSTER(インスター)」と、スポーツグレードとなったIONIQ 5の別モデル「IONIQ 5 N」を引っ提げての展示である。その最大の魅力である高い蓄電量を武器に、災害時や外出時に電力供給を可能とするV2Xのプラットフォームとしても活躍出来る事をアピールしていた。なおINSTERはスモールタイプの車両でありながら、バッテリーの蓄電量は高グレードモデルであれば総電力量なんと49.0kWhという高い数字をマーク。これはざっと計算すると、日本の一般的な一軒家の家庭であれば1日分の電力消費量は12kWhとされている昨今では、4日間程生活するのに必要な電力量に相当する。なお同時に展示されたIONIQ 5 Nはラインナップにある新モデルのIONIQ 5 と同じ容量の総電力量を誇り、その充電量は84.0kWhと破格。先に挙げた生活に必要な電力量をすべて賄うならば一週間程は生活可能という仕様も相まって、各種電気自動車は同社の想定どおりに高い売れ行きを誇っているとの事だ。

 

 

走りを追求する国内メーカーの試み

 

先述した2社のブースを除けば、会場内で電気自動車である事を大きくアピールして販売しているメーカーはほぼ見ない状況である。特に国内自動車メーカーは、自社ブランドで電気自動車やハイブリッド車を手がけていたとしても、それと並立する形でスポーツカーやガソリン車といった他の製品を用意してブースを盛り上げていた。

 

 

株式会社SUBARUは自動車の走行・エンジン・排気音を組み合わせ、展示ブース内に光の演出とともに爆音を響かせるプログラムを逐次開催。電気自動車全盛と言われているこの流れの中で、けたたましく鳴るエンジンの響きはまさしく「大暴れ」していると表現するにふさわしい様相を見せていた。同社は今後500台の限定生産ではあるが、「S210」を発表。現在まだ未受注という事でプロトタイプという名前こそ付いているが、近々注文を受けて生産を行うとの事である。同車両はひと世代前のS209が北米市場限定で出されているものの、国内のスバル車ユーザー(スバリスト)からの熱い声援を受けてこの度国内向けにも新規車両として生産を行うとの事であった。

 

 

スズキ株式会社は自社の展開する車両としてソリオやソリオ・バンディット、フロンクス、スイフト・スポーツなどを展示。更にブース最奥にはトヨタ自動車株式会社のモリゾウこと豊田章男氏がフルカスタマイズを行ったジムニーが展示されるといった多様なラインナップを見せつける。ユーザー層も同社のクルマを利用する場合はきっちりと別れており、現状はソリオ、ジムニーに次ぐ形でフロンクスとスイフト・スポーツが同率三位を分け合っているとの事である。ジムニーに関してはまだまだ旺盛な人気を見せており、軽自動車ながらも手堅く安全性の高い車両のニーズは当分絶えそうにない事を伝えてくれている。

 

 

マツダ株式会社は、今回バイオ燃料実証車としてサーキットで走行しているマツダ・ロードスター(MX-5)やマツダ3(アクセラ)、フルカスタマイズされたCX-60といったモデルを展示。展示の方向性としてはレーシング系に舵を切っている事もあり、ブース内ではサーキット走行を行うシミュレーションにゲストが興ずる様子も紹介された。今後マツダ株式会社の方向性としては現状日本において市場が活発化しているハイブリッド車はもちろんの事、電気自動車についても取り組まなくてはならない状況にある為手探りで技術を紐解いている所であるという。先日発表されたCX-80についてもディーゼル、ディーゼルハイブリッド、PHEVの3タイプを揃えているため、技術的にも製品カテゴリ的にも世相にあった車両開発はまだまだ続けていく様子だ。

 

 

本田技研工業株式会社はステージに自社のクーペタイプの新規車両プレリュード PROTOTYPEを展示。これまで発表されてきた新型プレリュードにエアロを換装したハイブリッド車になると見込まれているが、本イベントでも全容が明かされていない状況である。一方ブース内で試乗体験による盛り上がりを見せていた車両の一つが、CIVIC TypeRだ。セダンタイプの車両が斜陽に入る中で、本田技研工業はブース内にカスタムパーツブランド「無限」仕様の同車も併せて展示。市場に出回るSUVモデルも軽自動車も無い純粋なセダンやレースの為の展示ブースという様相も相まって、出展しているブースの中ではかなり挑戦的な展示であったと言える。実際の訓練用レーシングマシンをシミュレーターの筐体として活用している事例も展示されており、多くの参加者が長蛇の列を作っていたことは言うまでもないだろう。

 

 

総合的に多くの車種を展示していたブースとして印象深かったのは、日産自動車株式会社のブースである。同社の看板車種として日産・X-TRAILや日産・セレナを展示している一方で、ブースの反対側に存在したのはなんとR32EVというコンセプトモデル。読んで字のごとく、日産R32型スカイラインGT-Rを電気自動車仕様に改造したものである。その他にも電気自動車として日産・アリアが停まっているすぐそばに、日産・フェアレディZの4代目新型モデルやNISSAN GT-R NISMOを配置し、スポーツカーと電気自動車が混在するスペースを生み出している。これまで日産・ローレルといった「人と歴史に寄り添う車両」をメインにしてきた同社だが、もちろん走りもおろそかにせず研鑽し続けているといったメッセージ性を大きくアピールするのに十分なラインナップと言えるだろう。新型フェアレディZ等のスポーツカーで得られた走りの知見を市販車、そして電気自動車に活かす事で「走りと制御、双方の技術を両輪で高めていく事」が重要だと担当者は語っていた。走りがなければ日産ではない、走りがあるから日産であるというのはまさに同社がスポーツカーグレードを生み出し続ける原動力なのだろう。

 

海外の車両に求められるガソリン需要

 

 

 

今回タフな展示を見せつけたと感じられるブースが2つあったが、その一つは三菱自動車工業株式会社のブースだ。同社の看板車種として最近躍り出た三菱・トライトンをはじめとした同社の車両カスタマイズモデルを比較、展示する内容のブースを展開。いわゆる「かわいい軽自動車やハイソな電気自動車」方面ではなくオフロードを攻める剛健さを兼ね備えた車両が所狭しと展示されている様子は、同社の気風を表しているかのようでもある。アウトランダーやデリカD:5の車両にまぎれてデリカミニのサポートカーAXCR2024実走車両が停まっていたが、こころなしかデリカミニもマッシヴな車両なのではないかと思ってしまうほどである。また同社の車両に合わせたカスタマイズ製品として、アルパイン株式会社もカスタマイズ製品の提供元として高い人気を得ているとの事だ。

 

 

ではこういった「タフな頑健さ」が売りのガソリン車、ディーゼル車はどこで求められているのだろうか。それに関する明確な答えを打ち出しているのがトヨタ自動車株式会社である。今回はダイハツ工業株式会社と共同でブースを出しており、そこでまず目を引くのは走りのための車両、即ちTOYOTA GAZOO RacingとDAIHATSU GAZOO Racingのコーナーである。現在の主力車種の一つとして挙げられるトヨタ・ヤリスの中でもよりスポーツグレードとしてブラッシュアップを掛けたGRヤリス向けプロトタイプのエアロパッケージといったものや、ニュルブルクリンクを戦った86やレクサスLFAといった車両も展示。ダイハツ側では自社のミライースのレーシング車両を「量産化してみたらこうなるのでは」というカスタマイズ車両を出して来ており、レースに掛ける両企業の意気込みの度合いが感じられるものであった。

 

 

そして同ブースの反対側に鎮座するのが、国産で頑健な車種として知名度の高いトヨタ・ランドクルーザーだ。ラリーを戦ったランドクルーザー 300の実車や海外製パーツで固めていながら国内走行可能なランドクルーザー 70が展示。特に70については日本再輸入が決まり、これまでのガソリンエンジン+MTという方式からディーゼルエンジン+ATという大幅な調整を行い、結果としてドライバーの裾野を広げる事に成功している。トヨタと言えばランクルというワードが出てくる同社のこの製品の主な市場がどこかというと、仕事車として利用する北米はもちろん、オーストラリアや中東、アフリカといった地域である。

 

現状多くの地域でハイブリッド車や電気自動車の投入が進んでいるものの、インフラが整備されていなかったり現地での修理が行えなかったり手間暇掛かってしまう地域では「お呼びでない」状況となってしまっている。昼は暑く夜は冷え込む砂漠地帯やインフラの整備が非常に困難な荒地や係争地といった環境下で果たしてハイテクな車両を維持、整備出来るのかというと得てしてそうではない。頑丈で、最低限のパーツで動かせ、その上整備も楽で走破性も高い車両というのが好まれるのはそういった土地なのである。逆に言ってしまえば、こういった車両は都市圏ではやや扱いにくい情勢となってしまっている点で、大体の市販車との棲み分けがある種出来ているという事でもある。ハイテクとローテク、どちらの車両にも現状必要とされるニーズがあり、それにメーカーがいかに応えていくかというのが今後の鍵となっていくだろう。

 

 

今回の東京オートサロンは例年以上にメーカー展示車両の顔ぶれが様々であり、各メーカーが打ち出すコンセプトも様々であった。果たしてどういったコンセプトの車両が今後市場の覇権を握り、またチェッカーフラッグを受けることになるのか、今後もますます目が離せない様相となりそうだ。

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

 

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