MRAI's 12th IMRC 2025 Jaipur 鉛バッテリーリサイクルの循環性、持続可能性、グリーン転換
2025年1月29日、インド・ジャイプルで開催されたMRAI(Material Recycling Association of India)の第12回IMRC(International Material Recycling Conference)2025において、「バッテリーリサイクル:循環性、持続可能性、グリーン転換」と題したセッションが実施された。本セッションでは、「イノベーションにおける設計、研究、技術の役割」をテーマとしたパネルディスカッションが行われ、業界の専門家が鉛バッテリーリサイクルの課題と展望について意見を交わした。
本パネルディスカッションには、以下の登壇者が参加した。
- Dr. Parveen Kumar(WRI India・持続可能バッテリープログラム責任者)
- Mr. L. Pugazhenthy(インド鉛亜鉛開発協会(ILZDA)・エグゼクティブディレクター)
- Mr. Vinay Sharma(GDB International・インド事業責任者)
- Mr. Debi Prasad Dash(インドエネルギー貯蔵アライアンス(IESA)・エグゼクティブディレクター)
- Ms. Jayasree Biswas(IITボンベイ・助教授)
Dr. Parveenは、鉛バッテリー産業の一部の関係者が短期的な利益を優先し、長期的な視点を欠いた設計を行っている点を指摘。鉛バッテリーの循環利用やリサイクルを推進するには、業界全体の連携が不可欠であると強調した。また、製造業者とリサイクル業者、再利用プレーヤーとの間の協力が重要であり、これにはAI技術を活用した設計改善や革新的な技術導入が求められると述べた。
次に、Mr. L. Pugazhenthyは、インドの鉛バッテリーリサイクルの現状について説明した。インドは年間約150万トンの鉛を消費し、その80%がバッテリー産業で再利用されていると述べ、業界の規制枠組みが確立されている点を強調した。一方で、回収メカニズムの改善や使用済みバッテリーの適切な取り扱いが課題であり、国際的な協力や技術革新を通じて解決策を模索していると述べた。
いまなおインドでは鉛リサイクルのスタートアップ企業が続々と出てきている。鉛バッテリーの発生源は自動車、三輪車(トライシクル)、電力関係で使われるUPS。停電の多いインドではこのUPS需要がきわめて大きい。
Mr. Vinay Sharmaは、バッテリーデータの共有や適切な処理の課題に言及し、社会的責任の重要性を強調。未登録の業者へのバッテリー販売を防ぎ、適切なリサイクルを促進するためのインセンティブが必要だと述べた。また、都市部の回収システムの改善や、酸耐性車両の導入といった物流課題の解決に向けた取り組みが不可欠であると主張した。またGST(付加価値税)の18%が高すぎるため、これを軽減してほしい、ということを強調していた。
さらに、Dr. Parveenは、リバースロジスティクスの効率化に向けたコラボレーションの重要性を指摘し、データ管理や技術情報の共有によってリサイクルの安全性とコスト効率を向上させる必要があると述べた。
Mr. Debi Prasad Dashは、インドにおける研究開発(R&D)資金の不足を課題として挙げ、政府が企業のR&D投資を促進するためのボンドやインセンティブを導入すべきだと提言した。
最後に、Ms. Jayasree Biswasは、ナトリウムイオン電池などの新技術の市場導入を促進するために、学術機関と産業界のさらなる協力が必要だと述べた。また、MRAIが主催するようなイベントが、研究と産業の橋渡しとなることを評価し、今後もこのような取り組みが求められると強調した。
しかしながらインドの大学教授はほとんどフィールドワークを行わないようで、このあたりは日本、中国の大学教授と大きく異なるところだろう。
本パネルディスカッションでは、バッテリーリサイクルの課題と解決策について、多角的な視点から議論が交わされた。特に、産学官の連携、規制の強化、技術革新の必要性が強調され、今後の持続可能なバッテリーリサイクルの実現に向けた指針が示された。
(IRuniverse Tanamachi & Lin)
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