レアアース市場近況2025#6 小幅高、原材料ひっ迫と市場活性化でランタン下げ止まり
2025年3月中旬~3月下旬のレアアース市況は小幅に上昇している。ミャンマーからの鉱石供給のひっ迫懸念が引き続き強く、価格を支えている。中国の製造業がやや回復する中、超硬向けの金属ランタンがやっと下げ止まるなど変調の兆しも見える。ただ、実際の需要は鈍く、膠着感も感じられる。
■ランタン毎週上昇、中国の工場再開
金属ランタンは3月6日に仲値$3.25/Kg、3月13日に$3.3と毎週のように値上がりした。水準としては過去20年間の最安値圏にあり、中期でも2024年12月から4か月間に渡り横ばいが続いていたが、動きが出てきた。
上海有色網(SMM)は2月の月次分析や3月12日のレポートで「春節(旧正月)に操業を停止していた金属企業もフル稼働し、材料調達に向けた取引量が増えた」と説明。市場活動の活発化が価格上昇に結び付いたと指摘した。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
中国の製造業活動の活発化は同国のレアアース市場全体でも見て取れる。レアアース業界団体である中国稀土協会が発表するレアアース価格の平均値は3月24日に182.9と、前週末の183.1から小幅に下落した。3月13日に183.9に上げて過去1年間での最高値を付けた後も高止まりしている。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
■価格巡り綱引き、膠着感も
金属ネオジムと金属テルビウムも一段高となった。金属ネオジムは3月13日に$76.25/kgに、金属テルビウムは同日に$1110/kgにそれぞれ上げた。金属ネオジムは2024年10月以来、金属テルビウムは同年5月末以来の高値水準が続く。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
一方、金属ジスプロジウムは動きが鈍い。3月6日に仲値$298/kgに下げ、その後は動きなし。3月初旬まで付けた$300超えの水準を修正し、その後は様子見ムードが強い。
SMMは前述のレポートで「調達企業は低価格品を求める姿勢が強く、高く売りたい生産者側との綱引きが激しい。川下の需要がそれほどでもない中、膠着感も出ている」とも指摘した。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
<Topic>
●3月20日
米ホワイトハウスは3月20日、ホームページ上で、「トランプ大統領が同国の鉱業振興を目指す大統領令に署名した」と発表した。
関連記事:トランプ米大統領、鉱物生産の振興で大統領令に署名 国防強化、「強い米国」再び | MIRU
米国のレアアース関連政策では、2月末の首脳会談で決裂した同国とウクライナの鉱物供給契約がまとまる方向にあるとの見方が伝わる。また、バンス米副大統領の夫人が、3月27日からデンマーク領グリーンランドを訪問する予定だ。トランプ米大統領はグリーンランドのレアアース資源に対してもかねて注目していると発言してきた。
●3月16日
NHKニュースは3月16日、「日本政府がJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じてフランス企業のレア―ス製錬事業へ1億ユーロを投資する」と伝えた。経済産業省とJOGMECは3月17日に自社ホームページ上でそれぞれ正式に発表した。
(出所:経済産業省ホームページ)
関連記事:JOGMEC、仏レア―ス精錬リサイクルパイオニア事業へ1億ユーロ投資 | MIRU
プレスリリース(経産省):日仏両政府が連携し、フランス共和国内の重レアアースプロジェクトを支援します (METI/経済産業省)
プレスリリース(JOGMEC): 仏カレマグ社への出融資について ~レアアース供給源多角化に向けた事業参画~ : ニュースリリース | 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC]
●3月13日
米地質調査所(USGS)は1月の報告書で、ベトナムのレアアース埋蔵量予測を従来の2200万トンから350万トンに大幅に下方修正した。ロイター通信が3月13日に伝えた。これにより、ベトナムの埋蔵量ランキングはこれまでの2位から6位に転落した。
●3月12日
オーストラリア資源大手のビクトリー・メタルズ(Victory Metals)は3月12日、西オーストラリア(WA)州のレアアース開発計画が期待できる水準だと発表した。
関連記事: 豪Victory Metals社 WA州North Stanmoreレアアースプロジェクトの優位性に自信 | MIRU
●3月7日
中国税関総署が3月7日に発表した中国の2025年1-2月の貿易統計で、レアアース輸入総額は前年同期比29.4%減と、減少率は2024年通年の29.7%減から小幅に縮小した。輸入量は24.1%減で、減少率は2024年の24.4%減からやはり小幅に縮小した。
1-2月のレアアース輸出総額は0.4%減と、減少率は2024年の36.0%減から大きく改善した。輸出量は3.0%減で、2024年の6.8%増から減少に転じた。
関連記事: 中国のレアアース輸入額、1-2月は29.4%減 小幅に改善、輸出量はマイナスに | MIRU
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/07/31 【JOGMEC金属資源セミナー】半導体単結晶と中国レアアース規制を巡る最新動向を紹介――令和7年度第1回クリティカルミネラルブリーフィング開催
- 2025/07/31 欧州からの風:July 2025 「ドイツ政府、バルカン・エナジー社のリチウムプロジェクトを支援」
- 2025/07/31 (速報)日本国内自動車生産 2025年6月生産台数69万台 2025年前半397万台前年比7%増加
- 2025/07/30 【貿易統計/日本】 2025年6月のレアアース(希土類)輸出入統計
- 2025/07/30 東ソー 東大設置の『次世代ジルコニア創出社会連携講座』を更新
- 2025/07/30 レアメタル千夜一夜 第62夜 ジャパン・アズ・ナンバーワンから凋落へ:失われた30年と資源戦略の蹉跌
- 2025/07/29 豪ライナス・レアアース、中国輸出規制で大儲け 4-6月期の売上高26%増、価格高騰
- 2025/07/29 磁石向けレアアース需要、2035年に3倍増に・マッキンゼー最新レポート
- 2025/07/28 レアメタル千夜一夜 第61夜 日本の国益を最大化する日米資源開発戦略(第2部)
- 2025/07/28 工具生販在Report#70超硬工具 2025年工具の販売増加率徐々に縮小