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エヌ・ピー・シー(6255) 25/8H1決算メモ ペロブスカイトPV装置大型受注でポジティブ

25/8期納期ずれで13.9%増収21.8%営利減予想に減額もペロブスカイト大型受注獲得

株価円(4/17)617円   時価総額182億円       発行済株22052千株

PER(25/8期DO予:10.7X)PBR(1.33X) 配当(25/8期予)10円  配当利回り:1.6%

 

要約

・25/8H1は一部納期ずれで売上未達も部品増で11%減収、営利横ばいと利益上振れて着地

・25/8期FS向け納期遅れ13.9%減収21.8%営利減に減額も3月大口受注48.1億円獲得

・新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す

 

25/8H1は一部納期ずれで売上未達も部品増で11%減収、営利横ばいと利益上振れて着地

 

 4/10に25/8H1決算が開示され、4/11にWEB説明会が開催された。25/8H1は、売上高31.21億円(期初計画比1.55億円未達、11.0%減)、営業利益6.56億円(同1.20億円上振れ、0.0%増)、経常利益6.46億円(同1.10億円上振れ、2.5%減)、受注高10.6億円(85.1%減)、受注残60.17億円(56.6%減)、生産26.19億円(45.3%減)で着地した。計画に対しFS向けの部品売上が好調に推移、一方、FA,PV解体装置などの納期ずれで売上が未達、利益は好採算の部品売上が寄与、販管費が計画通りで推移し営利が上振れた。受注は当初Q2に受注予定のペロブスカイト関連を含め期ずれしたため大幅減も、3月に48.10億円を受注している。

 

 25/8期よりセグメント別での開示がなったため伸び率がわからないが、製品別ではPV製造装置18.20億円、FA装置6.47億円、PV解体装置0.52億円、部品5.47億円、環境関連サービス0.56億円という内訳。地域別売上ではアメリカが18.72億円(34.4%減で、FS向けがペロブスカイト開発装置の納入と部品は増加も、改造、FA装置が納期ずれで減少の模様。国内は8.73億円(4.2倍)と国内ペロブスカイト用開発装置を納入、PV解体装置も1台納入。FA装置はQ1で期ずれの電子部品業界向けの計上があり、全体で大きな伸びに。

 

 受注は25/8H1では同期比85.1%減の10.59億円も、3月に国内ペロブスカイト関連の大型受注、国内シリコン系PV案件を受注、3月だけで48.11億円(大半国内ペロブスカイト)を獲得、受注残高も107.20億円に戻している。

 

25/8期FS向け納期遅れ13.9%減収21.8%営利減に減額も3月大口受注48.1億円獲得 

 

 25/8期会社側では当期受注、当期売上を見込んでいた改造等の案件とFA関連の低迷などを勘案、部品売上は順調ながら25/8期予想を減額修正した。25/8期修正予想は売上高92.94億円(期初計画比16.31億円減額、13.9%減)、総利益30.93億円(1.12億円減額、13.6%減)、営業利益19.04億円(同1.65億円減額、21.8%減)、経常利益18.96億円(同1.73億円減額、21.6%減)、税引利益11.95億円(3.54億円減額、28.7%減)とした。部品売上が期中受注、期中売上8.5億円は計画通りに推移、一方で改造・その他の期中受注・期中売上が計画20億円に対し僅か3.65億円程度と大幅未達となることが売上未達の大半を占める。なおFSの改造案件の遅延の理由はFSのPV稼働が高稼働を続けており、改造のために設備休止ができないことが理由で、改造需要がなくなったわけではないとのこと。利益面では受注残高に含まれる部品の受注残高(部品の受注残高は非開示)の消化を含め部品売上が拡大、部品の構成比が上昇することから総利益率については0.2ポイント改善し33.3%を想定(期初計画比4.0ポイントアップ)としている。営業利益の減額1.64億円の増減要因では売上減で4.81億円減、原価低減、部品増で3.70億円増、販管費負担増0.53億円減を見込む。ちなみに改造案件の期ずれがなければ利益増額もあり得たとみられる。

 

新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す

 

 同社は新中計見通しとして27/8期に売上高130億円、営利26億円を目指す。中心となるのはFS向けの拡大にある。

 

 米国のPVはトランプ政権樹立で中国製PVに対する高額関税がさらに上乗せされ、国内メーカーへの需要拡大が続く見通しの中でFSの設備増強継続が見込まれる。FSは世界第11番目の生産能力に止まるも、米国ではNO1企業であり、トランプ政権でさらに優位性が高まる可能性がある。具体的にFSのCdTePVはシリコンに比べて製造プロセスが短く、エネルギー消費も少なく、製造コストを抑えることができている。また材料の使用量も少なく資源の有効活用にもつながっている。さらに高温環境下でも出力低下が少なく、日射量が多く気温も高い地域でも安定した発電性能を発揮できる。製造に必要なエネルギーが少ないため、PV発電所の投資回収期間が短くて済み、カドニウムの毒性に対応しリサイクルプロセスも確立しており環境負荷の低減にもなる。このような特性から大規模太陽光発電所市場で強みを持つため、大規模データセンタ対応のPV発電所としても有望であり、FSの成長に合わせ、同社受注拡大が加速する可能性を秘めている。ちなみにFSの2025年ガイダンスでは出荷量が2024年の14.1GWに対し2025年は18~20GWに拡大予想、設備投資額も13~15億ドルが予定され、生産能力が2024年稼働のアラバマ州3.5GWに続きルイジアナ新工場の能力増強で25GW(内米国内が14GW)となる予定。同社は26/2Q4にルイジアナ新工場向けに装置納入が予定されているが、更なる能力増強の動きもある。

 

 また既存の設備について特にオハイオ州の設備について施設改造により生産性を高める投資も継続している。同社は長年にわたりFSの大規模な薄膜モジュールの量産、特に信頼性の高い真空封止(ラミネート)技術やモジュール組立自動化、大面積対応で高い納入実績を有し、現在稼働中の全てに装置を納入しており、FSのCdTePV向けの新規納入、さらには累積稼働による部品納入、改造需要の拡大が続く見通しにある。

 

 加えてFS向けで注目されるのがペロブスカイトPVに対する取り組み。FSは2023年にスウェーデンのペロブスカイト技術専門企業Evolar社の買収を実行、CdTe技術を補完し、高効率なタンデム型太陽電池の開発を加速させることを目指している。Evolar社は、真空蒸着法に基づく製造プロセスを有しており、ペロブスカイトの課題である耐久性向上において優位性を有している模様。同社はオハイオ州ジム・ノーランPVイノベーションセンターでペロブスカイトPVの開発ラインを立ち上げたが、同社はペロブスカイトPVの実用化にあたっての最大の課題と言われる水分や酸素に対する脆弱性に対し、これを克服するための高度な封止技術が必要なこともあり、この開発ライン向けにペロブスカイト、タンデム関連の受注を獲得している。なおタンデム型PVにおいてはCdTe薄膜とペロブスカイト(またはCIGS)を組み合わせ、理論的に30%を超える高効率化の可能性を秘めている。実用化にはNREL(米国エネルギー省の国立再生可能エネルギー研究所)、ZSW(CIGSをベースとした薄膜太陽電池と技術移転プロセスの開発に取り組み、10年以上にわたりペロブスカイト太陽電池の開発にも取り組んでいる)との連携も行っており、長期的な成長エンジンへの戦略的投資を着実に進めている。

 

 現在、ペロブスカイト層の長期信頼性確保、界面制御、大面積での均一な成膜、コスト効率の高い量産技術の確立など、多くの技術的課題が存在するが、今後、開発ラインから量産ラインに移る場合にはさらに大きな受注金額の獲得が期待される。

 

 

 ペロブシカイトPVについては25/2H1で間に合わなかったが、3月に国内向けにペロブスカイトモジュール化工程でのパイロットプラントの大型受注獲得に成功した(金額は3月受注総額48.11億円の大半)。具体的な受注先の開示は無いが、受注時期からみて、25年度安城自社工場で実証試験開始(NEDOの助成事業の活用)するとしているアイシン精機向けの可能性がある。また同社は今回の受注以外の会社からの引き合いもあると話しており、パイロットプラントだけでも複数の受注獲得が期待され、さらに量産化ともなれば更なる大型受注も期待される。

 

 

 もう一つの注目事業がPV解体装置。PV解体装置は様々な方式があるが、欧州向けに「ホットナイフ分離法」を利用したガラスが再生ガラスの原料として利用が始まり、既に板ガラスとして600t以上の再利用が行われている。25/8期は台湾企業からも受注、今後も海外でのリユース規制強化などで欧米での同社方式の受注獲得拡大が期待される。また日本でも2025年中にPVパネルリサイクル義務化の動き、再資源化事業等高度化法(リサイクル事業者の認定制度)の整備法案が出される見通しで、25/8期は2社から受注を獲得(累積実績で国内17社、海外6社)、国内でも解体装置、リユース販売の拡大が期待される。

 

 

 このほか、環境関連サービスとして太陽光発電所の検査サービス、太陽光パネルのリユース・リサイクルについて4/8に京セラコミュニケーションシステムと連携契約を結び、同ビジネスの拡大加速を目指すこととなった。

 

 全体を通じ、FSの中長期的な需要拡大、加えてペロブスカイトPV、ホットナイフ分離によるPV解体分離装置の拡大が期待され、25/8期は期ずれで収益の減額修正見通しとなったものの、26/8期以降は同社の成長力が高まり、新中計の27/8期中計収益の達成が期待される。 

 

 株価は24/8Q3発表の翌日7/10に1497円の高値を付け,その後、全体相場の下落もあり株価が8/5に745円まで急落した後は緩やかに回復、しかし10/10に25/8期減益予想としたことで株価は冴えない動きで推移してきた。その後、4/10の25/8H1で減額修正したことから再度下落、4/11には587円の昨年来安値更新となった。現在、25/8期減額修正予想EPS55.35円に対しPER11.1倍は東証グロース市場機械の上場企業が少ないこともあり指標とならないため、東証スタンダードで比較すると機械平均PER11.4倍並みの水準にある。但し同社安値平均PER14.2倍に対し割安と言える。トランプの関税政策の影響は受けるものの、FSのPVはデータセンタ等大型PV発電装置として利用されており、しかも中国のPVが超高率関税で実質的に競争力がなくなるため、トランプ政権の再エネ軽視下でも需要拡大が見込める。また、国内ではペロブスカイトPVに対する大型設備助成策がさらに増額される見通しで、26/8期以降、同社社収益の拡大が加速する期待がある。今回減額修正で前年安値を更新したことで悪材料を織り込んだと判断、今後はペロブスカイトPVの主力銘柄としての評価が高まると判断、ややポジティブからポイティブに評価を引き上げたい。 

 

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

 
 

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