5月の世界経済 好材料乏しく下向きか、野村・高島氏 不調な4月経済指標の発表が重荷
5月の世界経済は好材料が乏しく、暗めのムードになりそうだ。トランプ米政権が4月上旬に相互関税を発表・開始し、5月にはその影響が本格化し始める。野村証券金融経済研究所経済調査部コモディティ調査の高島雄貴エコノミストは「景気や経済に関税応酬の影響が及ぶのはこれから」と警戒を強める。
■関税影響、金融市場は最悪期を脱出
高島氏は「5月は関税後で初となる各国の4月の経済指標が発表になる」と話す。3月までに関税前の駆け込み取引が増えた反動もあり、「4月のデータはおおむね悪化が予想される」という。景気の悪化が確認されれば、市場心理は一段と冷え込む可能性が高い。高島氏は「景気を先取りして動く金融市場は既に最悪期を脱したムードだが、実際の経済に影響が及ぶのはこれからになる」と話した。
実際、米中両国が5月1日までに発表した4月の製造業の景況感指数(PMI)は、それぞれ前月から低下し、好不況の境目となる50を下回った。
米中PMIの推移
(出所:米国=ISM、中国=:国家統計局)
■銅やレアメタルは需要減で下落基調、金は好材料多し
関税の応酬が貿易を阻害する中、世界景気は中長期的な悪化が避けられなくなりつつある。高島氏は、銅やアルミをはじめとする産業用メタルやレアメタルなどについても「産業用メタルは景気との連動性が高い。特に中国はやはり『世界の工場』なので、関税応酬などを受けて中国景気の回復が遅れれば、産業用メタルの需要はどうしても限られる」との見方を示した。また、 銅については「かつてはドクター・コッパーと呼ばれ景気の先行指標的に見られていたが、最近は景気と連動して動く場面が目立っている」とも述べた。
過去3か月間のNY銅とLMEアルミ価格の推移($/Lb)($/ton)
半面、好調が続くと予想されるのが金だ。高島氏は「関税の拡大が中期的に続くとみられる上、米国が今後、利下げに踏み切って米ドルが下落すれば、米ドルと逆相関になる金には好材料となる」とし、「上昇する要因の方が多い」と話した。
過去3か月間のNY金価格の推移($/toz)
■関税交渉が安心感に
全体に不調が予想される5月の世界経済だが、もちろん一直線に悪化するわけではない。高島氏によると、「米国が各国と展開している関税交渉はセンチメントを下支えする」。
米国は5月8日には英国との関税交渉の合意を発表した。週末には米中高官の協議が予定され、日米再交渉も計画がある。「関税の上乗せ分がゼロになる可能性は低い」(高島氏)とはいうものの、緩和は安心感を誘うだろう。
(IR Universe Kure)
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