太陽誘電、2025年3月期は増収増益 インダクタ需要が想定超え、2026年3月期は大幅増益見込む
太陽誘電株式会社が5月9日に発表した2025年3月期の決算によると、売上高は前期比6%増の3,414億円、営業利益は同15%増の105億円となった。主力製品であるインダクタの需要が想定を上回り、2月時点の業績予想を上回る結果となった。2026年3月期の連結業績予想については、売上高はほぼ横ばいの3,400億円を見込む一方、営業利益は前年の1.5倍となる160億円を計画している。配当金は前期と同様の1株当たり90円を維持。加えて、従来の配当性向(30%)に加え、新たにDOE(株主資本配当率)3.5%を株主還元の指標として導入し、安定的な利益還元を目指す方針を明確化した。
経常利益は前期比23.6%減の105億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同72.0%減の23億円となった。これは第2四半期に計上した独占禁止法関連損失(17億円)や第4四半期の事業構造改善費用(3億円)といった特別損失の影響によるもの。特に、通信用デバイスを含む複合デバイスの売上は前年比34%減と大きく落ち込んだ。
製品別では、コンデンサが前期比12.7%増の2,321億円、インダクタが同10.8%増の615億円と好調。前者はノートPCやタブレット端末などの情報機器や自動車、サーバーをはじめとする情報インフラ・産業機器向けなどゲームやワイヤレスイヤフォンなどの民生機器に需要が見られた。後者はDDR5へのシフトで需要が拡大するメモリモジュールなどの情報機器、情報インフラ・産業機器向けで需要が拡大した。一方、複合デバイスは中国スマートフォン市場の低迷を背景に34.2%減の230億円、アルミ電解コンデンサなどを含むその他の製品も5.6%減の248億円に留まった。
全体的な売上構成として、情報インフラ・産業機器向けの売上構成比が20%に、タブレット端末やパソコンといった情報機器向けの売上構成比が18%とどちらも需要が旺盛になっており、この方面で今後の製品供給を行う方針を執る。先述した様に中国向けスマートフォンが需要バランスに与えた影響も大きく、構成比が31%から24%まで減少している。今後同領域での製品展開は懸念材料になりそうだ。
次期(2026年3月期)について、米国を中心とした各国の関税措置による影響は多少あると見越してはいる。しかし、北米向け売上比率は6.5%と低く、生産拠点がアジア各地に分散していることから、直接的な影響は軽微であると見ている。間接的な影響度の見通しについては現時点では不透明だが、最終製品への価格転嫁に伴う需要減をリスクとして想定し、当社売上への影響をマイナス90億円と試算して業績予想に反映している。
同社の電子部品の需要については、AIサーバーや自動車などに使用される高信頼性品、大型形状品を中心に拡大すると見られる。能力増強を継続して供給量を増やし拡大する需要に対応するとの事である。製品別売上高は、コンデンサは前期比3%の増収を予想。それ以外の製品は売上が減少することを想定している。為替レートを前期と同水準とした場合の増減率は、コンデンサがプラス11%、インダクタがプラス5%、複合デバイスがマイナス27%で、その他は前期並みとの見込みだ。
電子部品市場における需要回復の兆しは現状強い追い風となっている。太陽誘電は一定の成果を上げた一方で、為替の変動や関税措置、中国市場の縮小といった不確実性は依然として残っている。2026年3月期には増益を計画するが、外部環境の影響をどこまで織り込めるかが鍵となるだろう。
※途中の図表については太陽誘電株式会社 2025年3月期決算説明会資料より抜粋。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)
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