タングステンAPT価格が400ドル乗せ EUスポット12年ぶり高値 中国規制で供給ひっ迫
タングステン価格が一段高となっている。Mining.weeklyが5月16日、取引参加者の話として伝えたところによると、タングステンのベンチマークとなる欧州市場でのタングステンAPT価格は節目の$400/tonに乗せ、2013年以来12年ぶりの高値を付けた。中国が2月にタングステンの輸出を規制し、供給ひっ迫懸念が強まっている。
■中国APT、3月の輸出はゼロ
過去15年間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
中国は2月4日、タングステンバーなどタングステンの一部を輸出規制の対象に加えた。輸出禁止ではなく規制なので、中国の輸出企業が税関に申請し審査が通れば輸出が可能になるはずだが、実際には輸出はほぼ途絶えているのが現状だ。
中国税関の月次資料では、タングステン全体の輸出量は3月に前年同月比62.8%減り、減少率は2月の51.6%から拡大した。中国専門媒体のMorrychina の統計では、APTは3月の中国からの輸出はゼロだった。
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■スクラップも確保できず
中国は加工を含め、世界のタングステン生産の8割を握る。輸出規制を受けて西側の市場参加者の間では代替手段を探す動きが広がるが、うまくいっていない。Mining.weeklyは米資源のガーディアン・メタル・リソーシズのトップの話として、「中国の輸出規制が発表されて以来、スクラップの供給に過度に依存してきたが、今ではスクラップの供給が不足しており、新しい一次タングステン材料を確保できないことに対するパニックが高まっている」と伝えた。
スクラップ市場のひっ迫感は強まっている。中国国内でもタングステン鉱石の生産は減っているため加工向け材料としてのスクラップ需要が強く、中国はむしろスクラップの輸入を増やしているという。ひっ迫感に拍車がかかる中で日本の純タングステンスクラップも値上がりし、5月8日には仲値$45/kgを付けた。
過去3年間の純タングステンスクラップ価格の推移(99% of Japan)($/kg)
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(IR Universe Kure)
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