昨年から低位安定が続いている硫酸市況。いまだネガティブなトレンドが続いている。
一言でいえば需要不足。供給過剰。世界の実体経済を映す商品でもあるゆえ、両商品がネガティブであるということはそれだけ実体経済が弱いことの証左でもある。
硫酸は日本からはFOBでマイナス5ドル。中国の硫酸価格もトン当たり200元前後で低位安定。
(中国の硫酸価格推移 RMB/ton)
日本の場合、フィリピンのニッケルHPAL向けが200万トン以上あることが支えだが、この輸出が
なければ危機的な余剰になる。HPAL向け以外の需要は芳しくなく、60年ぶりの低水準にとどまる。
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アジア地域ではすでに中国が硫酸の純輸出国になっていることも硫酸市況の圧迫要因となっている。
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中国国内で肥料の生産規制があったことなどで国内肥料向け硫酸需要が落ち、硫酸は輸出ドライブがかかっている。
中国では、硫酸の供給源のひとつである銅製錬所の新規立ち上げが続いていることから、硫酸供給はなお増えることになる。ただ、3月~4月には中国の銅製錬所は前倒しでメンテナンスに入ることで若干、硫酸供給は引き締まる可能性はある。が、劇的に上昇するようなことはないだろう。
硫黄のほうも状況は芳しくない。
アジア地域、中国CIFでトン当たり100~120ドル(固形硫黄、以下同)、欧州FOBで70ドル前後。
中国では実勢900元前後で推移している。
(中国の硫黄価格の推移 RMB/ton)
こちらも地合いは弱い。溶融硫黄はこの固形硫黄の1/3程度の価格であるため、30ドル前後と推量される。日本から中国向けに輸出される溶融硫黄は今年の1月中旬は50ドル前後だったため、1か月で20ドルは下がったことになる。
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(IRUNIVERSE/MIRU YT)