欧州自動車大手ステランティスは12月10日、自社ホームページ上で、「車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と折半出資し、スペインに電気自動車(EV)向けリン酸鉄リチウム(LFP)電池の工場を建設する」と発表した。投資額は最大41億ユーロ(約6540億円)。2026年末の始動を目指す。
■既に23年秋に覚書
新工場はスペイン北東部のサラゴサに建設する。スペイン政府と欧州連合(EU)の支援があれば、生産能力は最大50ギガワット時(GWh)と大型工場にできる見通しだ。合弁手続きは2025年中に完了する予定。両社は2023年秋にLFPモジュールを巡る協力で覚書を交わしていた。
■スペインは追加関税の投票棄権、一枚岩でない欧州
欧州はEVを巡り中国勢の攻勢に苦しむ。EUは10月、中国産EVに対し追加関税の適用を始めたが、内情は一枚岩ではなく、今回の工場建設用地となったスペインは追加関税の決定を求める投票に棄権した国の1つだった。投票では、参加した27国のうちドイツなど5か国が反対。賛成は10か国、棄権は12か国だった。中国は11月、反対や棄権が多かったにもかかわらず追加関税を始めたのは妥当性に欠くとして世界貿易機関(WTO)に訴えた。
一方、CATLはハンガリーやドイツに工場を構えるなど、かねて欧州事業に積極的だった。中国勢としては電池など部品で進出する分には完成車向けの追加関税を避けることができるため、欧州メーカーとの合弁は好都合でもある。
(IR Universe Kure)