中国税関総署が4月18日に発表した中国の3月の輸出統計月報では、銅とタングステンで明暗が分かれた。米国の関税引き上げを前に銅の駆け込み輸出が増えた半面、中国政府が2月に輸出規制の対象としたタングステンは輸出量が急減した。特にレアメタルはアンチモンの米向け輸出が途絶えているとの報道もあり、供給ひっ迫懸念が強い。
プレスリリース:(13)2025年3月出口主要商品量值表(美元值)
プレスリリース:(13)2025年2月出口主要商品量值表(美元值)
■銅輸出は3月に6割増、値下がり見越し駆け込み
税関総署の資料によると、2025年3月の未鋳造銅と銅製品の輸出量は前年同月比60.4%増え、増加率は2月の40.1%増から拡大した。アルミの未鋳造品とアルミ製品の輸出量は3月に前年同月比1.1%減。減少率は2月の3.6%減から縮小し、改善した。
米中は2月から関税の応酬を始め、3月から4月にかけて本格化した。特に4月には米国の相互関税導入が予告されていただけに、中国側からは銅やアルミといった主要金属の輸出を急ぐ動きが強まったとみられる。関税導入で銅価格が値下がりするとの観測も強まり、高いうちに輸出してしまおうとする動きも広がった。実際、銅相場は4月初旬に急落し、ロンドン金属取引所(LME)の国際価格は一時節目の$9000/tonを割り込んだ。
過去3か月間のLME銅価格の推移($/ton)
■タングステン輸出は6割減、アンチモンも1-3月に5割超減少
一方、タングステンの輸出量は3月に前年同月比62.8%減り、減少率は2月の51.6%から拡大した。中国当局は2月4日、タングステンなど5品目を輸出規制の対象にした。
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輸出規制の対象になった場合、税関の審査を通過すれば輸出できることになってはいるが、審査基準が不透明で速度も遅く、現実的には輸出は滞っているとみられる。ロイター通信は4月20日、中国の輸出規制により、「レアメタルは世界的な供給規模が歴史的な低水準になっている」と指摘。報道によれば、1-3月期はアンチモンの製品輸出が前年同期比57%減、ゲルマニウムは39%減となった。また、ガリウムの輸出量は3月に2023年10月以来の低水準を記録したという。
足元では、特にアンチモンは供給ひっ迫懸念が強く、価格は過去最高値圏での推移が続く。4月に入ってからは$5万9800/tonで推移している。ロイター通信は「特に米国向けのアンチモン輸出は、2024年秋からゼロが続いている」とも報じた。
過去3年間のアンチモン価格の推移(MMTA grade)($/ton)
(IR Universe Kure)