2025年6月のタングステン市場は上昇した。ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格は6月26日に仲値$452.5/MTUを付けた。高値では$475で、2011年5月に付けた過去20年間の高値($483)に接近している。中国当局が2月にタングステンを輸出規制対象に加えたことで中国からの供給が途絶え、品薄感が強まっている。
■中国、5月のタングステン輸出は32%減
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
中国税関総署が6月20日に発表した中国の5月の貿易統計月報によると、5月のタングステンの輸出量は968トンと、4月(1005トン)から減少し、前年同月比では32%減った。1-5月の減少率も29.9%減で、輸出の大幅減が続いている。中国国内でも資源枯渇などを背景にタングステン流通量がひっ迫していることもあり、中国当局は輸出規制を緩めていない。
中国の5月の品目別輸出 一番下がタングステン
(出所:中国税関総署)
一方、国際的なタングステン需要は回復の可能性がある。上海有色網(SMM)は6月20日付のレポートで「中東情勢の激化が海外の軍事需要の伸びを牽引している」と指摘。イスラエルとイラクの問題は6月末時点では小休止を迎えたが、ウクライナ情勢も含めて地政学的な不安はくすぶり、世界的な軍事需要が価格を下支えする構図は変わらない。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
APTに追随しやすい酸化タングステンも同じ動き。6月26日に仲値$462.5/MTUと、2011年に付けた過去20年間の最高値($482)を目指す展開となっている。
■節目越えての上昇続く
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
ほかの形状のタングステンも上昇している。タングステンバーと鉄鋼向けのフェロタングステン、タングステンカーパイトは、それぞれ5月に節目の$50を回復した。やはり10年以上ぶりの高値圏にある。
過去3か月間の純タングステンスクラップ価格の推移(99% of Japan)($/kg)
日本のスクラップも依然として品薄感が強い。
■中国鉱石価格は小幅安
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%) ($/MTU) (RMB/mt)
一方、鉱石価格はやや異なる展開を見せている。国際価格は6月19日に302.5/MTUと節目の$300台に上げた。一方、中国の鉱石価格は同じ日にRMB17万2000とそれまでのRMB17万4000から小幅に下げた。
中国は自国内のタングステン鉱山の老化を補うため、ミャンマーなどからの鉱石輸入を増やしている。5月までは鉱石も供給ひっ迫感が強かったが、過度な品薄懸念はひとまず和らいだ模様だ。
(IR Universe Kure)
 
     
             
             
             
            