7月の世界経済は相互関税の上乗せ分の猶予期限となっている7月9日を境に、ムードが一変しそうだ。9日まではやはり様子見気分が強い。野村証券金融経済研究所経済調査部コモディティ調査の高島雄貴エコノミストは「もし猶予期限が延長されれば、ひとまず安心感が広がるだろう」と話す。
■9月まで猶予期間延長の期待
米相互関税を巡っては、7月4日時点で合意に達しているのはイギリスとベトナムの2国のみ。テレビ朝日などの4日報道によると、トランプ米大統領は7月3日、記者団の質問に答え、「アメリカと取引するならこれだけ払えという内容の手紙をおそらく明日(7月4日)から1日10通程度、送り始めるつもりだ」と話したという。
一方、ベッセント財務長官が6月27日、「18の重要な貿易相手のうち10~18の国と署名できれば、残りの重要な貿易相手は20程度となる。(9月1日の)レーバー・デーまでに、交渉を取りまとめることが可能だと思う」と述べたと伝わった。このため、「市場では(9月まで)猶予期限が伸びるとの楽観的な見方が広がっている」(高島氏)という。
■米輸送の先回りでスプレッド拡大
市場ではまた、米関税の織り込みが進む。高島氏は金属の動きについて、「関税がかかる前にと米国に先回りして輸送する動きが強まっている」と話す。わかりやすく反映しているのは銅相場だ。ロンドン金属取引所(LME)とニューヨーク商品取引所(COMEX)の価格差(スプレッド)が開き、米国に銅が集まる構図が浮き彫りになった。また、現物と先物の差も拡大した。
過去3か月間のLMEとNYの銅価格の推移($/ton)($/lb)
過去3か月間のLME銅相場の推移($/ton)
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高島氏はこの流れも「7月9日を岐路にいったんムードが変わる」との見方を示した。
■原油は落ち着き、ドル円は140円台か
米関税以外の要因はどうか。中東の緊張が意識されるが、原油相場は堅調を維持している。
過去6か月間の豪州産一般炭相場とNY原油相場の推移($/ton)($/barrel)
高島氏は「原油や石炭は2025年に入り一進一退の動きを繰り返してきた」と話す。6月までの中東の緊張が価格を押し上げる場面もあったが7月に入ってからは一服し、「米国とイランの核協議が再開する可能性があるとの期待が広がっている」(高島氏)という。
気になる為替相場は、1ドル=140円台の推移が続きそうだ。野村証券の7月4日付レポートでは、7月7-12日のドル円予想レンジは142-147円。米労働省が7月3日に発表した6月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は14万7000人増で市場予想を上回った。堅調な米景気がドルを下支えし、円には下押し圧力となりそうだ。
過去3か月間のドル円相場の推移($/JPY)
日本に関する独自要因としては、7月20日に参議院選挙の投開票が予定されている。選挙対策で米関税に対応しにくくなれば、為替動向に影響する可能性がある。また、世界規模で見てもやはり7月9日の動向によって、為替市場に混乱が起きる恐れもある。
(IR Universe Kure)