2025年7月中旬~7月下旬のレアアース市況は上昇している。伝統的なオフシーズンが終盤に差し掛かり、今後の需要増を期待する買いが入っている。関税交渉の進展などによる中国からの輸出の改善もムードを明るくしている。金属ネオジムと金属テルビウムがそれぞれ1年半ぶりの高値圏に上昇している。
■中国の価格指数、190超えで最高値圏
中国の業界団体である中国稀土協会が月次で発表しているレアアース価格の平均値は7月22日に192.3と、前日の192.9から小幅に下落した。ただ、7月14日に節目の190に乗せ、過去1年半余りの最高値圏で推移している。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
上海有色網(SMM)は7月17日までのレポートで、「オフシーズンが終わりに近づくにつれて最終用途の需要の改善が期待され、下流の磁性材料企業は高価な金属の受け入れを徐々に増やしている」と指摘。中国の国有レアアース大手である中国北方稀土(集団)高科技による落札価格が上昇していることも「取引企業の楽観ムードを後押ししている」と分析した。
■ネオジムとテルビウムが1年半ぶり高値
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
強気ムードは特に磁石向け材料で強い。磁石向け軽希土類の代表格である金属ネオジムは7月17日に$82.25/kgと、節目の$80台を回復し、2023年12月以来ほぼ1年半ぶりの高値を付けた。7月10日に$79.25を付けたのに続き2週続けて値を上げた。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
中国が輸出規制の対象とする金属テルビウムも、やはり毎週のように上昇した。7月17日に$1255/kgと、2024年1月以来の高値を付けた。
■ジスプロシウムとランタンはやや様子見も
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
もっとも、オフシーズンが完全に明けたわけではないだけに、様子見気分はくすぶる。金属ジスプロシウムと金属ランタンは7月10日に値上がりした。金属ジスプロシウムは$298/kgと、3月以来の高値に戻した。18年ぶりの安値圏で低迷する金属ランタンも$3.35/kgを付け、2024年9月以来1年10か月ぶりの高値に上げた。ただ、双方ともにその後は動きが止まっている。
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●7月21日
中国税関総署が7月21日に発表した6月の貿易統計月報によると、レアアース輸出量は7742トンと、前年同月比60.3%増えた。1-6月期では11.9%増だった。レアアース製品では6月に1万1547トンで、前年同月比6.5%増。1-6月期では3.2%減だった。
輸出先国家別では、6月の対米輸出のうち、レアアース磁石の輸出量は353トンと5月の7.6倍に増えた。中国から世界全体へのレアアース磁石の輸出量も3188トンと前月比で2.6倍に増えた。前年同月比では38.1%減だった。
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●7月18日
中国の国家安全省は7月18日、SNSの微信(ウィーチャット)への投稿で、外国の情報機関が規制対象のレアアースを盗み出そうとしたと非難し、密輸防止の強化を表明した。米ブルームバーグ通信が同日伝えた。
●7月16日
日本鉱業協会、全国金属鉱業振興対策協議会、日本基幹産業労働組合連合会などで構成する鉱業政策促進懇談会は7月16日、都内で会合を開き、「令和8年度鉱業政策の確立に関する要望書」を採択した。
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●7月15日
米アップルは7月15日、自社ホームページ上で、「米資源大手MPマテリアルズコーポレーションに5億ドル(約740億円)を出資する」と発表した。MPマテリアルズは7月10日に米国防省とパートナーシップを契約していた。
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●7月15日
オーストラリア資源開発のクリティカ・リミテッド(Critica Limited)は7月15日、経営トップの入れ替えを行った。
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(IR Universe Kure)