2025年8月中旬~8月下旬のレアアース市況は、対米を含む磁石向けレアアースの輸出回復を材料に金属ネオジムがおよそ2年4か月ぶりの高値圏に高騰している。ただ、それ以外はおおむね横ばい。磁石向けの軽希土類に市場の注目が集中し、ほかの鉱種に動きが出にくい状況が続いている。
■ネオジム2023年4月以来の高値
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
磁石向け需要の多い軽希土類の代表格である金属ネオジムは8月7日に$92.25/kgと2023年4月以来ほぼ2年4か月ぶりの高値を付けた。
Ferroalloy.net(鉄合金在線)は8月21日、税関の月次データを基に算出した同社の調査結果として、中国の7月のレアアース磁石の輸出は5577トンと前月比75%、前年同月比5.7%それぞれ増えたと発表した。1月以来の輸出量となり、4月の輸出規制開始前の水準に戻ったことになる。
輸出先別ではドイツが前月比46%増の1116トン。米国も前月比75.5%増の619トンで、前年同月比でも5%増えた。1-7月のレアアース磁石の輸出量は前年同期比15%減の2万7897トン。
■中国の価格指数は1年半余りの高値圏
軽希土類の好調に押され、中国国内のレアアース価格全体手も上昇している。中国の業界団体である中国稀土協会が日次で発表しているレアアース価格の平均値は8月22日に230.2と、前日の233.2から小幅に下落した。ただ、節目の200を大きく上回り、過去1年半余りの最高値圏で推移している。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
米中は8月12日に期限を迎えていた関税交渉期限を11月まで再延長した。交渉の過程でレアアースが再び武器化される恐れは残る。
■磁石向け以外は動き乏しく
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
ただ、他はほぼ横ばい。金属テルビウムは7月17日に付けた$1255/kgを維持している。金属ランタンも7月10日に付けた値から動かない。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属ジスプロシウムは8月7日に$297/kgに小幅に下げた。7月初旬以来の安値になるものの、微調整の範囲内と言える。
中国税関総署が8月7日に発表した中国の2025年7月の貿易統計で、7月単月でのレアアース全体の輸出量は5994トンと6月単月の7742トンから23%減った。レアアース全体ではやや需要に伸び悩みもみられ、慎重な見方も出ている。
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●8月18日
日本政府は経済安全保障上、重要な物資を生産する日本企業の海外展開を後押しする。法改正し、東南アジア諸国連合(ASEAN)や新興・途上国での事業を官民で支えるための基金を設ける。日本経済新聞が8月18日に伝えた。
●8月7日
インドとロシアはニューデリーで開催の「近代化と産業協力に関するインド・ロシア作業部会の第11回会合」で、レアアース採掘を含む産業での協力で覚書を交わした。シンガポールメディアのCNBCをはじめ東南アジアメディアが8月7日に伝えた
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●8月6日
米国唯一のレアアース磁石メーカーであるノビオン・マグネティクス(Noveon Magnetics)は8月6日、自社ホームページ上で、「米自動車のゼネラル・モーターズ(GM)との間で、レアアース磁石の供給契約を結んだ」と発表した。
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(IR Universe Kure)