2025年国際電池リサイクル会議(ICBR)の展示場からシリーズで企業を紹介しているが、第三弾はルーマニアの電池リサイクラーECOWESを紹介する。EUの電池リサイクラーはドイツやフランスをはじめとする西ヨーロッパに集中しているなか、ルーマニアの業者はまだ珍しい。
MIRUがブースを訪れると、ECOWESのブースは非常に人気が高く、人だかりができている。同社との商談アポをとる業者が多数詰めかけているようだ。セールス担当のパトリシアさんへ早速ECOWESの事業活動について話を聞いた。
大規模処理能力と先進インフラ
ECOWESは年間11,000トンの処理能力を持ち、あらゆる種類の電池および蓄電池(鉛含有を除く)のリサイクルに統合的なソリューションを提供している。同社は材料回収の最大化、環境リスクの最小化、リサイクルプロセス全体を通じた完全なトレーサビリティの確保を目的として設計された独自の技術インフラを開発しているという。また、複数部門にわたり異なる電池技術を扱っていることも同社の強みである。
産業部門では、定置型蓄電システム、航空、鉄道、海洋用電池を扱い、NCA、NMC、LMC、NI-MH、LTC、NI-CD電池を含む様々な種類に対応する。民生用電子機器部部門では、携帯電子機器から電動工具、医療機器まで、NMC、NI-MH、LiSO2、NI-CD、アルカリ電池に対応。電動モビリティ部門ではe-bike、電動スクーター、EV、バス、商用車などに搭載されるNCA、NMC、LFP、LCOなどの先進的な電池をリサイクルする。生産廃棄物部門では、電極スクラップ、活物質粉末、バッテリー生産施設からの不良部品を含む製造廃棄物も管理している。
複雑なEU法規制への対応についても、ADR認可車両と専用コンテナで危険廃棄物の安全な取り扱いを確保し、EU認証により、すべてのバッチにリサイクル証明書を提供する。
加えて同社は、内部プロセスの効率性を活用することで、EU全域で他に類を見ない料金でのサービスで提供が可能だという。ブースの人気の理由はここにあるのかもしれない。
同社は、湿式処理ではなく、破砕技術による機械処理を採用している。このアプローチにより、リチウム、コバルト、ニッケルなどの回収可能な金属を含む貴重な中間製品であるブラックマスまでの処理を行う。社内でのさらなる材料精製は行わず、ブラックマスを下流の処理業者に販売し、国際的な協力の機会も創出しているといえる。
「当社は海外企業とのパートナーシップに対してもオープンです」とパトリシアさんは述べ、ブラックマスの調達に関心を持つ企業との協力への意欲を示した。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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