
名古屋大学とGOTO、プロ・クリエイティブの3者連携で、安全性と経済性を両立した新しい電池回収技術の確立へ
粉末成形プレスの設計・製造を手がける株式会社GOTO(本社:愛知県常滑市)は、10月21日、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(大学院工学研究科 石垣範和助教)およびプロ・クリエイティブ株式会社(本社:兵庫県神戸市)と共同で、廃リチウムイオン電池の安全な回収とリサイクル技術の確立を目指し、人手・水・電気を使わずに作動する形状自由な消火機器の研究開発に取り組むと発表した。
同社の粉末成形技術を活かし、安全で効率的な電池回収技術の確立に取り組むことで、循環型社会の実現に貢献する。
本共同研究の背景・課題
スマートフォンやノートPC、モバイルバッテリーなどに広く使われるリチウムイオン電池は、劣化や損傷によって膨張・破損することがあり、発火や火災の原因となることがある。近年では、廃棄された電池を原因とする火災が、ごみ収集車や回収ボックス、ごみ処理施設など全国各地で相次ぎ、社会問題となっている。
こうした事故を防ぐには、廃電池を安全に保管・回収できる新しい仕組みが必要。しかし現状では、設置スペースやコスト、安全管理の面から、既存の防火設備を導入できない現場も多く、安全で経済的な電池回収方法の確立が求められている。
研究の目的・取り組み内容
同研究では、炎や熱に反応して初期消火や延焼防止を可能にする「消火性成形体」を活用し、人手や電力を必要としない新しい電池処理技術を開発している。
「消火性成形体」は、火や熱に反応して自ら発火を抑え、初期の段階で炎の拡大を防ぐ機能を持つ素材。形状の自由度が高いため、電池の保管ボックスや輸送容器、リサイクル現場など、さまざまな用途に応じて設計することができる。
また、電源や水道設備などの大掛かりなインフラを必要としないため、既存の防火設備を設置しづらい場所でも導入が容易で、環境や人体に配慮した素材を採用しており、低コストかつ環境負荷の少ない防火・回収技術としての活用が期待できる。

リチウムイオン二次電池の保管・輸送用を想定した消火性成形体の試作品 (Credit: Nagoya University)
この目的を実現するため、3者は以下の体制で研究を進める。
3者の担当分野
* 名古屋大学(石垣範和助教):リチウム二次電池材料の研究開発経験を基に、材料工学・資源循環の知見を活かした消火性成形体の研究開発を主導
* 株式会社GOTO:粉末成形プレスや粉体成形機の設計・製造技術を活用し、消火性成形体製造用のプレス装置を開発・提供
* プロ・クリエイティブ株式会社:消火性成形体を用いた二次電池用の消火機器の製造
今後の展望
株式会社GOTOは、粉末成形プレス技術を活かした本実証実験を通じて、廃リチウムイオン電池リサイクルの安全性を高め、資源リサイクル技術の社会実装に貢献します。今後は、電池リサイクル分野にとどまらず、環境保全技術や次世代エネルギー材料など新領域への応用を見据え、粉末成形技術の進化を続けていく。

(IR universe rr)