IRuniverse取材チームが参加する世界のリサイクル業界を代表する国際組織BIR(Bureau of International Recycling)の秋季大会が、2025年10月27日、タイ・バンコクの五つ星ホテルCentara Grand & Bangkok Convention Centre at CentralWorldで開幕した。会議は10月27日から28日の2日間にわたり開催され、世界58カ国から1,100人を超えるリサイクル関連企業、トレーダー、政策担当者、調査機関などが参加し、活発な議論や商談が交わされる。

開会初日のオープニングセッションでは、BIR会長Sussie Burrage氏が「ここでは物資の取引ではなく、知識と信頼の交換である」と述べ、国際的なネットワークの重要性を強調した。また、オープンな国際市場へのアクセスがなければ、リサイクル産業は発展できず、技術革新への投資も継続できないと、自由貿易と連携の推進に引き続き注力する姿勢を示した。
Burrage会長は「メンバーの信頼と関与、そして継続的な支援に深く感謝する」と述べ、BIRを支える全ての関係者への謝意を示すとともに、次回BIR会議を2026年6月1日から3日にスウェーデン・ヨーテボリで開催することを発表した。
Burrage会長の挨拶の後、企業・政府戦略の専門家でありバイデン、オバマ、クリントン米国歴代大統領に助言をしてきたJuan Verde氏が基調講演を行った。

Verde氏は冒頭、「私たちは歴史的な分岐点に立っている。自由貿易とグローバル経済に適用されてきたルールは、もはや通用しない。これから誕生する新しい世界秩序は、特に皆さんの業界に大きな影響を与えるだろう」と語り、会場の注目を集めた。
講演は次の三つのテーマを中心に展開された。
- 地政学的パワーバランスの変化(特に中国の台頭)
- 技術、サプライチェーン、紛争、保護主義に関する世界的トレンド
- サステナビリティとリサイクリングの将来
中国の台頭についてVerde氏は、「米国や欧州が自らの製造業と産業能力を中国に移転してきた“成功”の結果として、中国はいまや米国と肩を並べる超大国となった」と指摘。その競争が資源、特に重要鉱物をめぐる新たな争奪戦を引き起こしていると述べた。
また、5G、AI、量子コンピューティング、バイオテクノロジー、宇宙技術といった革新分野は、いずれも大国間競争の一部であり、こうした変化が世界経済を再構築し、リサイクル業界をも想像を超える形で変えていくと語った。
さらに、地域化とフレンドショアリング(友好国への生産回帰)の流れが強まる中、米国のような大国が主要産業やサプライチェーンの一部を国内へ戻しつつあることに触れた。その結果、保護主義の強化と資源安全保障をめぐる競争が加速し、リサイクル業界にも影響を及ぼしているという。
Verde氏は「この新しい保護主義は、むしろ皆さんの業界にとって好機です。各国は国内のリサイクル能力を高めるために、想像を超える投資を余儀なくされるでしょう」と述べ、サステナビリティ推進の潮流は今後も続くと強調した。
「たとえ気候変動を否定する米大統領ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに戻っても、方向性が変わることはない。変わるのは“スピード”だけである」とし、バイデン政権が推進したインフレ抑制法(IRA)によるグリーン投資政策を共和党も覆すことはないとの見方を示した。その理由として、IRAの恩恵が共和党支持層の州や企業にも広く及んでいる点を挙げ、民間企業も強靭性、国家安全保障、産業競争力の観点からグリーン経済を支持していると述べた。
さらにVerde氏は、重要鉱物リサイクル市場が2033年までに年平均約15%の成長が見込まれるとし、リサイクル業界の中でも最も成長速度が高い分野であると分析。2019〜2024年の5年間で、リサイクルおよびサーキュラーエコノミーへの世界的投資額は1,600億米ドルを超え、40%増加したと紹介した。
講演の締めくくりでは、ギリシャ語の「Kairos(すべてが変わる“好機の時”)」に言及し、「いまはリサイクル産業にとってまさにKairosの瞬間。皆さんは、より持続可能で、より健康的で、より平和な世界をつくっている」と結んだ。
質疑応答では、BIR元会長のTom Bird氏が「各国がネットゼロ目標を急ぐあまり、特に欧州では経済的な負担が国民生活を圧迫している」と懸念を示した。これに対しVerde氏は「欧州は民間セクターが経済に情熱と活力を吹き込む方法を見つける必要がある。現在の欧州は規制過多で、経済を窒息させている」と応じた。

講演終了後、弊社・棚町がVerde氏に対し、パトリオットミサイルなどの防衛技術に使用されるサマリウム・コバルト磁石(SmCo磁石)の原料であるサマリウム価格の高騰が世界の軍需産業に与える影響について質問した。サマリウム・コバルト磁石は、高温環境下でも磁力を維持できる特性から、ジェットエンジンや誘導兵器、ミサイル制御システムなどに広く利用されている。
これに対し、Verde氏は「地政学の影響がアジアに移っているというのは、これも理由の一つ。重要なレアアースの需要が世界の軍事力に直接的な影響を与えているということを基調講演で伝えたかった」と答え、さらにIRuniverseが主催する13th Battery Summit in TOKYO(2026年3月17・18日開催)への参加意欲も示してくれた。

今回のBIR秋季大会ではリサイクル業界が直面する地政学的変化や技術革新、保護主義の影響といった複雑な課題が浮き彫りになった。一方で、重要鉱物リサイクルやサーキュラーエコノミーへの投資拡大など、業界にとっての成長機会も明確になった。こうした環境下で、リサイクル業界は単なる資源循環の役割を超え、持続可能性と経済・安全保障の双方に貢献できる戦略的産業として、その重要性を一層増すことが期待される。
IRuniverseは本会議を通じて世界中の関係者と接触し、主催予定のイベントの宣伝、およびコンサルティング活動の幅をさらに広げていく予定である。会議の詳細な内容については、今後順次公開していく。
(IRuniverse Midori Fushimi)