11月25日、IRUNIVERSE主催の「第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム」を愛知県名古屋市内で開催。国内外で活躍するサーキュラーエコノミー企業や行政の関係者ら13人が講師として登壇し、聴講者も100人ほど集まり、日本のCE(サーキュラーエコノミー)について議論を交わした。
ダニエリエンジニアリングジャパン株式会社 代表取締役 泉直樹氏:「ダニエリのリサイクルマシンの紹介」
ダニエリグループおよびダニエリジャパンは、製鉄・非鉄向け機械設備を総合的に供給するイタリアの100年企業であり、家族経営ながら上場しているため経営の透明性が確保されている。グループ全体の年商は約42億ユーロ(約7,300億円)を超え、欧州、米州、アジアで事業を展開している。製品ごとの事業部制を採用しており、本稿で紹介するのはスクラップ処理を担う「ダニエリ・セントロリサイクリング」である。同部門の年商は約1億ユーロで、新設設備が約6割、補修・部品が4割を占める。
ダニエリの競合はSMSグループやクライメンタルテクノロジーであるが、ダニエリは世界7拠点の自社工場で製造する“ものづくり重視”の体制を特徴とする。日本向けの設備はイタリア本社工場、タイ・ラヨン工場、中国・常熱工場が中心となって製造している。ダニエリエンジニアリングジャパンは2007年に設立し、20名ほどの従業員が働いている。過去、東京製鐵やトピー工業、愛知製鋼などに設備を納入し、直近では千代田製鉄工業やJFE条鋼姫路、JFEスチール倉敷向けの設備を受注している。
リサイクル設備の中核となるシュレッダーは多数の納入実績を持つほか、インバータ制御によるモータードライブを採用している点が大きな特徴だ。従来のソフトスターター方式と異なり、周波数を可変させることで無駄な電力消費を抑制でき、ネットワークへの負荷低減、迅速な起動、設備寿命向上が期待できる。また、ローター形状は北米で主流のディスク型、欧州で主流のキャップ付きディスク型、南米で主流のスパイダー型の3種類を用意しており、投入スクラップや操業方針に応じて選択可能である。
さらに、ダスト制御では活性炭フィルターを用いた独自技術を提供し、排気中の汚染物質を契約保証値以上に低減できる点が評価されている。シュレッダープラントは投入設備、破砕部、鉄・非鉄分離、風力・磁力選別、エディカレントによる非鉄金属回収まで一貫ラインで構成されるが、部分導入にも柔軟に応じている。
最近ブラジルのグアルンビオス社に納入した2000HPシュレッダーは、インバータ駆動と高度な分離工程により高品質なスクラップ製造を実現し、操業開始後の生産性は期待を上回る評価を得ている。ダニエリは今後も省電力、省人化、安全性、環境対応を軸に、国内外でリサイクル設備の最適提案を進めていく方針だ。
東京製鐡株式会社 大阪支店長 伊藤岳氏:「電炉新時代を勝ち抜く本物の電炉とは」
東京製鐡は国内最大の電炉メーカーであり、約1,000名の従業員で高い生産効率を実現している。東京製鐡といえばH形鋼のイメージが強いが、現在は鋼板や厚板の生産が主力となっており、原料は100%鉄スクラップである。これはサーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルの双方に貢献する電炉メーカーの重要な特徴である。主力の田原工場は清潔で先進的な設備を備え、従来の製鉄所のイメージを覆す環境を実現している。
鉄鋼業は製造業の中でも最大のCO₂排出産業であり、社会全体のカーボンニュートラル達成には電炉化が不可欠である。高炉では鉄鉱石起因で大量のCO₂が発生するが、電炉はスクラップを溶解するため排出量を大幅に削減できる。日本国内には約14億トンの都市鉱山が存在し、スクラップは豊富であるため、電炉拡大のポテンシャルは高い。
また、2027年度からはプライム上場企業を中心にGHG排出量の開示が義務化され、スコープ3として製品素材の環境負荷が対象となる。よって自動車・建設など大手メーカーは、供給される鉄鋼のCO₂排出量を把握する必要がある。この流れにより、国内でも高炉メーカーが電炉建設に動き出しているが、その多くが鉄スクラップではなく、加工スクラップや還元鉄など「きれいな原料」を中心とする点で本質的なサーキュラーエコノミーとは異なる。
これに対し東京製鐡は、安価で余剰する老廃スクラップの活用を前提に、本物のサーキュラーエコノミーを実現する電炉操業を行っている。全国にサテライトヤードを設け、スクラップの発生地近くで集荷することで安価に安定調達し、世界最大級の大型炉で希釈効果を活かして品質を安定化させている。スクラップは全量屋内保管で品質管理を徹底し、不純物は溶解時のスラグ化で除去する技術基盤を整えている。また、同社はスクラップの品質管理をさらに高めるため、AIを活用したスクラップ選別の導入試験を進めている。
さらに、環境省と連携した実証では老廃スクラップから自動車用鋼板を製造可能であることを証明し、今月、複数のトヨタ車で採用されることが発表された。これは電炉鋼の品質への不安を払拭する大きな成果である。またEU向けには“ENSO”ブランドを展開し、第三者認証で原料の96%がリサイクル材であることを示すなど、国際的なグリーンスチール市場にも対応している。
東京製鉄は、電炉時代の主役としてサーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルを両立し、豊富な老廃スクラップと最新のアップサイクル技術を武器に、本物の電炉として社会の脱炭素と持続可能な素材供給を牽引していく考えである。
(IRuniverse Midori Fushimi)